『アンチヒーロー』飯田Pが明かす“名前”に込めた思い 最終回の注目ポイント&撮影秘話も
TBS系日曜劇場『アンチヒーロー』が6月16日放送の第10話で最終回を迎える。オンエアを前に飯田和孝プロデューサーが取材に応じ、撮影秘話や見どころを語った。 【写真】『アンチヒーロー』最終回先行カット 本当の正義とは何かを訴えかける主人公・明墨(長谷川博己)の暗躍はもとより、もっとも視聴者目線に近い弁護士・赤峰(北村匠海)の心の動きに惹き込まれた本作。飯田プロデューサーは「北村匠海さんという俳優の、“赤峰をどう作っていくか”というプランニングがすべてでした。本当に見事で、脚本に書かれていた赤峰を何十倍にもしてくれた実感があります」と北村の表現力を絶賛する。 「とくに、第2話の最後に廃棄場で緋山(岩田剛典)がジャンパーを処分して、その後、事務所に戻ってきた赤峰と明墨のシーンには思い出があります。というのも、撮影の順番として、廃棄場のシーンをやった後にあの場面をどうしても撮りたくて。廃棄場での感情を踏まえて、赤峰がどう明墨の前に立つのかが大事だと。ですが廃棄場の撮影が何回か延期になって、1カ月くらい先延ばしになったんですよね。ようやく撮れたという思いもありましたし、当然1カ月あれば他のシーンも撮影しているので、それぞれのキャラクターが固まってきている。その中で、赤峰は“そこでジャンパーを拾っている”という感情をしっかりと持って、明墨先生の前に立ってくれました」 さらに「北村くんは、途中から赤峰と同化しちゃっていて。第3話で“先生がなんのために犯罪者を無罪にするのか、見極めていく”と明墨に決意を告げてから、赤峰の変化を緻密に演じ続けていましたし、緋山にジャンパーを見せたあたりからは赤峰が怖くなってきたんです。ゾクゾクするというか」とも。最終回、赤峰は接見室で明墨に対してドキッとするようなセリフを口にするが、「あれは口調やトーンに演出はつけていないです。もはや、赤峰は北村さんなんです。赤峰が言ってるんだから、そうだろうって」と明かした。 本作では、脚本家の4人チーム制を採用。飯田プロデューサーは「アイデアが枯渇しない」とメリットをあげ、「エピソードごとにも得意不得意があったりする。うまくパート分けができたと思う」と手応えを語る。 昨今は視聴者に考察班が現れるなど、ドラマとSNSは切っても切れない関係に。当然、世間の反応も意識しており、「一つの事柄が全部繋がってくると、それがご都合主義に映ったり、『それ、もっと前から気づいてたでしょ?』というツッコミが出てくる」と飯田プロデューサー。そこで、ゴールにたどり着くまでのパズルをしっかりと埋めながら物語を組み立ててきたといい、「4人の脚本家がいてよかったですし、ディレクターからの指摘も大きかった」と話した。 最終回では、野村萬斎扮する検事正・伊達原と明墨が法廷で直接対決。萬斎の起用理由については、「日曜劇場らしい勧善懲悪の倒される敵というよりは、人間味や悲哀を伊達原という役に込めたかった」と打ち明ける。 映画『シン・ゴジラ』でも“敵対関係”にあった長谷川と萬斎だが、実は「そのことを完全に忘れててキャスティングしてしまった」と苦笑い。「もしかすると伊達原には、明墨に対して『ここまで来い』という思いがどこかにあったのかもしれない。そんな明墨正樹×伊達原泰輔の関係性が、長谷川博己×野村萬斎とシンクロしていて。最終回での掛け合いは、おふたりの関係性が影響しているところもあるのでは」とした。 また視聴者の間では、名前に“色”が入った人物が多数登場することも話題に。飯田プロデューサーは「明墨の“明と墨”は、白と黒。赤峰の“赤”は、熱量の高い色。紫ノ宮(堀田真由)の“紫”には、その2人を足したような冷静さと内にみなぎるものがある」と語り、その3色を掛け合わせるとドラマのテーマカラー(至極色)になるという。 続けて、「白木(大島優子)の“白”は純粋さ」、「青山(林泰文)の“青”は、爽やかな青なのか、少し黒が入った藍色なのか。人の感性によって、いろんなものに化けられる」、「緑川(木村佳乃)の“緑”はナチュラル。もともと街に潜んでいる色で、主張しすぎないけれど、そこにあるという存在が意味を持つ」とメッセージ。 「桃瀬(吹石一恵)の“桃”は、ドラマにおける愛の象徴です。なんだかんだこのドラマには愛というものが中心にある。人間が生きていく以上、愛が必ず動く動機になってくるので、そういった意味でも、桃瀬がこのドラマの軸になっているのではないでしょうか」 ドラマはいよいよ最終回。主演の長谷川に対しては「あらためて唯一無二の俳優さんだなと思いました。監督も交えて台本やキャラクターを作っていく中で、『ドラマ全体をよくしよう』『面白いものにしよう』という熱意と、周りを巻き込む力がある。引っ張るともまた違う、包み込む感じがあって、本当に尊敬しています」と思いを述べる。 「明墨は父親(志水/緒形直人)を冤罪犯に仕立て上げることで、少女(紗耶/近藤華)から家族を奪うことになってしまった。このドラマは、そんな明墨の“少女への想い”を救う物語」とした飯田プロデューサーは、「僕自身、2020年の12月に娘が生まれて、企画を立ち上げた段階から付け足した要素だったりするんです。志水、倉田(藤木直人)、伊達原、それぞれの父と娘の物語。自分が窮地に陥ったときに、自分自身にとって何が大切か、その感情に注目して見ていただけたらと思います。最終回の放送日は、父の日ですから」と呼びかける。 最後に「岩田剛典さんとのラストシーンが僕は本当に好きです。このドラマで言いたかったことが描かれている」と熱を込め、「プチ情報としては、青山さんの奥さんも出てきます(笑)」と締めくくった。
nakamura omame