“鉄人”金本氏に並ぶ35試合連続出塁記録の巨人・坂本勇人は「キャッチャー泣かせ」
またこの35試合を振り返ると、そのうち11試合は、3打席まで出塁がなかったが、4打席目、5打席目でヒット或いは四球を選んでいる。最後まで抜かない、あきらめない、というゲームに向かうメンタルの変化が記録にもつながっている。主将の自覚だろう。この日も、4打席目で完封敗戦を拒否する13号ソロを最終打席に放った。 元千葉ロッテの評論家、里崎智也氏は、記録が続いている理由の第一にコンディションをあげる。 「体が元気なんじゃないですか。元々、首位打者を獲得するような技術のある選手ですから、コンディションさえ万全で、どこも痛いところ気になるところがないのなら、こういう好調をキープできます。ケアも含めて試合に臨む準備が万全の状態なのでしょう」 昨季は7月に左脇腹を痛めて、約1か月間、戦列を離れた。今季は自主トレから「故障をしない体作り」をテーマにトレーニングを重ねて、コンディションに万全の気を使っている。 捕手の立場から見て坂本ほど配球に苦慮するバッターはいないという。 「インコース打ちがうまい。アウトコースもさばける。しかも引っ張るだけでなく右方向へ打てて長打がある。もちろん状況に応じて軽打もできる。このボール、このコースが苦手だという明らかな弱点がない。キャッチャーにとって一番難しい、嫌なバッターです。しかも、打ち損じが少ない。僕が現役時代に対戦したバッターで、坂本のような弱点がないキャッチャー泣かせは、ソフトバンクの内川聖一、全盛期のラミレス監督、左打者なら稲葉篤紀さん(侍ジャパン監督)、小笠原道大さん(中日2軍監督)クラスです。どこにも投げる場所がないというバッター。坂本を抑えるには、インコースに強いことがわかっていてもアウトコース一辺倒になると簡単にやられるので、インコースの使い方が重要になります。ただ、一つ間違えばやられるので、投手に高い技術、ボールの質が求められることになりますし、駆け引きが必要になるでしょう」 しかも、坂本が主張する“サカマル効果”があるのだ。 「丸のようなバッターが後ろにいると、逆に四球で簡単に歩かせられない、という意識がバッテリーに働きます。出塁率に関しては、そう影響はないのでしょうが、無理に勝負して打たれるパターンはあるのかもしれません」 ずいぶんと先の話になるが3冠王達成のの可能性はどうなのだろうか。 里崎氏は「可能性はゼロではないでしょうが、自力で、どうにもできないのが打点。セ・リーグは9番に投手が入るので1、2番では、打点を稼ぐことが難しいかもしれません。それとチーム力にも左右されますよね。だから過去の3冠王はすべて4番打者です」という見方をしている。 確かに2番最強論を採用するメジャーでも昨年の打点王はDH制度のないナ・リーグがカブスのバエズで、ア・リーグがレッドソックスの“フライ革命”の代名詞とも言えるJDマルティネスで、いずれも主にクリーンナップを打っている打者だ。前に走者が溜まらない1、2番の打順では打点タイトル奪取は至難の技かもしれないが、逆に言えば、常識を打ち破る挑戦となる。巨人打線の出来次第だろう。 坂本の次なる目標はセ・リーグ記録に更新であり、1983年に西武のスティーブが作った40試合の日本記録。それを乗り越えると次には“開幕”の2文字が省かれる連続出塁の日本記録が待っている。1994年にオリックス時代のイチローが5月から8月にかけて作った69試合連続出塁記録である。