『ザ!世界仰天ニュース』石田昌浩氏、「赤木ファイル」「統一教会」…バラエティで“今の問題”に切り込む意義
――事件や事故を再現VTRで紹介する番組は各局でもありますが、細かくチェックされるのですか? 再現を扱う他番組は、見ないようにしています。見てちょっとでも頭に残っちゃったら意識しちゃって自由に作れなくなるので。自由に作った結果、「似てる」と言われても「そうだったの?」って言えるけど、もし見てたら「似てるな」と思った瞬間、自分で遠慮しちゃいますから。 ――『仰天ニュース』の今後の展望は、いかがでしょうか。 事件の裏方というのに注目していきたいと思いますね。例えば、京都アニメーション放火事件があって、その事件自体は裁判中ですからまだ一切番組で扱えませんが、瀕死だった青葉(真司)被告の命を助けるために必死に治療した鳥取大学の上田敬博医師の話を放送しました(「36人の命を奪い全身大火傷の被告と死の淵から生還させた医師」24年4月30日放送)。彼がいなかったら裁判が開かれなかったわけですが、大量殺人の疑いのある人物の命を救うということには、医者として微妙な倫理観の中で大きな葛藤と決意があったと思ったんです。そういう裏方の存在を伝えていきたいと思いますね。
“なり”で作ってる番組があっちゃいけない
――『仰天ニュース』に限らず、番組作りにおいて意識されていることは何でしょうか。 得意・不得意な番組があるとすると、ワーッと騒いで特に得るもののない番組は、不得意なんです(笑)。なので、見たときに「やっぱりそうなんだね」とか、笑いながらでも何かを得るとか、視聴者にプラスになるというものを心がけて作っています。 前に『ほこ×たて』(フジテレビ)という番組を作りましたが、地方の企業の若い技術者が作る鉄板の強度がこんなにすごいんだと伝えると、若い子が見て「こういう会社に就職したい」と思ってもらえるとか、素敵だったなと思うんです。 ――日本タングステンの超硬合金と、大手企業の最強ドリルとの対決、大好きでした。そんな長年にわたって業界の第一線で活躍される石田さんは、今のテレビをどのように見ていますか? 僕も含めてそうですが、テレビマンは「もっと真剣に作らないとテレビはダメになる!」、そう思ってほしいですね。伝えるのか?笑わせるのか?泣かせるのか?信念を持って作らないと。“なり”で作ってる番組が結構あるなと思います。「とりあえず納品しました」みたいな番組があっちゃいけないんです。 ――その点、『仰天』は手間をかけ、丁寧に取材を重ねて、真剣に作っているのが伝わってきます。 タレントさんとのロケは、もちろんディレクターの力量もありますが、映っているタレントさんの力量もあるじゃないですか。その人が面白ければ番組も面白い!ってなる。でも、『仰天』は再現ドラマがメインなので100%作り手の責任になる。面白いかどうかが全部こっちに跳ね返ってくるんです。タレントさんのせいに一つもできないですから、そういう意味でみんな緊張感ある中で仕事していると思いますね。 ■『仰天』のノウハウでドラマ作りに革命を起こしたい ――今後、こんな番組を作ってみたいというものはありますか? もうこの年ですからね…。でも、普通の連続ドラマを作ってみたいというのはあります。『仰天』の再現ドラマで培ったノウハウを生かして、時代にマッチした予算をかけずに豪華に見えるドラマを…。もっとドラマは簡単にできるんだという革命を作りたいです。 ――ご自身が影響を受けたテレビ番組を1本挙げるとすると、何ですか? テレビはあんまり見てなかったんですけど……先ほども言った『ウィークエンダー』ですね。自分は子どもの頃にコソコソ見ていましたが、今まさに子どもたちに堂々と見せられる再現ドラマを作るベースになっています。 ――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”を伺いたいのですが… 『いくらかわかる金?』という番組をうちの会社がお手伝いしているのですが、その番組や『バナナマンのせっかくグルメ!!』の総合演出をやっているTBSの平野亮一さんは興味があります。こんなこと言ったらアレだけど、平野さんが明日倒れて、もし『せっかくグルメ』を作ってくれって言われても、絶対できないです。独特な面白どころを持っているから、やり方が分からないんですよ。そこがすごいなと思っています。
中島優