包丁研ぎに3兄弟で15時間、「切れ味」求め過疎地のレストランに海外からも食通 京都・福知山のNOMI
新進気鋭の3兄弟がシェフを務める京都府福知山市三和町下川合、NOMI(ノーミ)レストラン。「切れ味」をコンセプトにした新しいスタイル、そして絶品のジビエ、山菜、地場野菜を使ったコース料理が話題を呼び、開店から2年も経たないうちに、都心部や海外の食通、料理人が訪れる人気店になった。
シェフの3兄弟は、山本遊士丸さん(23)、陽之進さん(21)、凛志郎さん(18)。父の晋也さん(55)と母の小登美さん(56)とともに、2009年に京都市から同町上川合に移住してきた。 晋也さんはIターン後に、農業での過疎地活性化に取り組むみわ・ダッシュ村の副村長に就任し、米作りなどの農業を始めた。しかし、「畑仕事だけでは収益的に厳しい」と、村内にあったプレハブ小屋を家族総出で改修。10年ほど前にカフェをオープンさせた。 3兄弟も料理などを手伝っていたが、当時の責任者は晋也さん。それから新型コロナウイルスが流行し、家族ら少人数で訪れ、感染を気にせず楽しめる予約制のレストランへと、22年1月に業態を変更した。
これを機に、全責任を3兄弟に委ねることに。3人ともに、三重県にある月山義高刃物店代表の藤原将志さんから、包丁研ぎの極意を教わる機会があり、そこで料理における「切れ味」の大切さを再認識。店のコンセプトにしようと決めた。 遊士丸さんは「幼少期から、兄弟でナイフを研いで、誰が一番うまく研げるか競い合ったり、自分で釣った魚をさばいたりしていました。そのころから、切れ味が大事だと感じていましたが、『おいしく切る』ということを、藤原さんから論理的に教わり、さらに追及するようになりました」と話す。
「キュウリ3本で切れ味が落ちる」 1コースで包丁20本使い分け
よく切れるだけでなく、素材に合った研ぎ方をした“切れ味の良い包丁”を使うと、味、香り、食感など全てが変わる。肉、魚、野菜など、1コースで20本ほどの包丁を使い分けるため、一日の研ぎ時間は1人5時間。3人では延べ15時間に及ぶ。 「キュウリでいうと、3本切れば切れ味が落ちるので」