いじめられっ子から特撮ヒロインへ 52歳の元アイドル、転機はクラスで歌った演歌「ピタリとなくなった」
現在は羊毛フェルトアートの創作にも精力的
今年7月、宮前さんの司会進行でゲストとともに、CoCo、ribbon、Qlairなど乙女塾出身者のアイドルソングを歌うイベント『アイドルアーカイブス特別版~夏歌 乙女塾~』が都内ライブハウスで開催された。花島さんは、デビュー曲『悲しみに一番近い場所』を歌唱。引退以来の歌に、駆けつけたファンからは温かい拍手が送られた。 「人前で歌うのは30数年ぶりでした。もう2度と歌うことはないと思っていたので最初は緊張しましたけど、ステージに上がった瞬間、あの頃に戻りました(笑)。長年、果たせなかった真樹ちゃんたちと一緒のステージで歌う夢が50歳を過ぎてからかないました。奇跡だし、もう何も後悔はありません」 花島さんは現在、趣味が高じて、羊毛フェルトアートの創作活動に励んでいる。きっかけは、悲しい出来事からだった。 「私は大の猫好きで家で5匹の猫を飼っていました。ところがその中の1匹、チッチという猫が3年前に行方不明になってしまいました。娘と一緒にご近所を回ったり、ビラ配りをしながら何か月も必死にチッチを探しましたが、結局見つからず、私はペットロスで精神的に落ち込んでしまいました。そんな時に羊毛フェルトの作品に出合い、チッチに会いたいという思いで、猫を作り始めました。何度も失敗しながら完成させたんですが、出来上がった作品を見た瞬間、チッチに会えたような気がして、心が満たされました。それがきっかけで私と同じように『ペットロスになっている人をフェルトアートで救えるかもしれない』と思い、猫専門のフェルトアートを本格的に始めてみました」 漫画や絵を描くことが好きで、演劇の衣装も1人で作り上げるなど、子どもの頃から手先が器用だった花島さん。その特技を生かしてフェルトアートでも細かい模様やぷよぷよの肉球まで再現している。創作活動も2年がたち、今では海外からのオーダーも受け付けている。 「試しにいくつか完成した猫の作品をメルカリに出品したところ、『亡くなった猫ちゃんを作ってほしい』というオーダーをいただくようになりました。それでネットの受注販売で作って欲しい猫ちゃんの写真をもとにブローチやトートバッグを作っています。一体作るのに早くて2日くらい。猫の毛の模様や細かいグラデーションなんかもきれいに再現しようとすると1週間くらい掛かるので、注文が多いときは数か月待ちになります。もともと趣味で始めたものなので商売といっても自分のペースでできる範囲なんです。また夏場は畑仕事が忙しいので、毎年秋から翌年春までの期間限定で続けています」 引退後も、紆余(うよ)曲折ありながら楽しいことを見つける花島さん。 「何かを始めるのに年齢なんて関係ないんです。私は50を過ぎて羊毛フェルトを始めましたが、60からでも70からでもできることはたくさんあります。子どもたちにも『困難をはねのける力は、自分自身の行動なんだよ』と伝えてきました。芸能界は大変なところだから、悩んでいる人たちもたくさんいると思います。私なんかが言える立場ではありませんが、『大事なのは自分で決めることだよ』と言いたいです。そしてこのインタビューを読んでくださったみなさんには、『あの頃キラキラしていた芸能人も1人の人間なんです』って伝えたいです」 これからも自分らしく道を進んでいく。 □花島優子(はなしま・ゆうこ)1972年9月17日、茨城県牛久市出身。90年、フジテレビ主催『乙女塾』3期生に合格。同期は中嶋美智代、佐藤愛子(ribbon)など。同年、東映不思議コメディーシリーズ『美少女仮面ポワトリン』(フジテレビ)で主役を演じ、同時にシングル『悲しみに一番近い場所』で歌手デビュー。その後もドラマ、バラエティーで活躍し、95年、結婚、妊娠を機に芸能界を引退。2012年、映画『仮面ライダー×仮面ライダーウィザード&フォーゼ MOVIE大戦アルティメイタム』の公開記念イベントで22年ぶりにポワトリンの衣装で舞台に登場。24年、宮前真樹(CoCo)主催の乙女塾イベントに登場し、引退以来となる歌唱を披露。現在、羊毛フェルトアートの創作活動などを行う。
福嶋剛