NATOの新事務総長、オランダ式現実主義でプーチン大統領と対峙へ
(ブルームバーグ): ほんの数年前、北大西洋条約機構(NATO)はトランプ前米大統領に酷評され、マクロン仏大統領には「脳死状態」と切り捨てられるほどに不安定だった。ロシアの脅威に対抗するために拡大した今、冷戦時代のこの同盟を地政学的な力として維持するという課題は、オランダのマーク・ルッテ前首相の手に委ねられている。
32カ国から成るNATOが極めて重要な時期を迎える中、ルッテ氏は1日、NATOの事務総長に就任した。同氏は公の場では愛想がいいが、舞台裏ではきちょうめんな性格として知られる。
トランプ氏が11月の米大統領選挙で勝利すれば、米国側からの支援は疑問視され、1949年に設立されたNATOに存亡の危機をもたらすだろう。ロシアによるウクライナ侵攻が3年目を迎え、ウクライナ政府が防衛のための継続した軍事・財政援助に依存している状況では、欧州の安全保障構造が不安定化する恐れがある。
ルッテ氏は1日、就任式を前に記者団に対し、次期米大統領がトランプ氏になろうがハリス副大統領になろうが、米国の大統領選を憂慮していないと言明。「わたしはどちらとも協力できるだろう」と語った。
ルッテ氏は一部の加盟国からテロ対策をもっと重視し、NATOの南側を強化するよう圧力を受けるだろうが、その一方で、特にドイツのような国では予算が逼迫(ひっぱく)しているため、信頼できる抑止力を維持するのに十分な防衛費を維持しなければならない。
同氏は正式就任した後の記者会見で、中国も主要な焦点になることを示唆し、中国政府がロシアのウクライナ侵攻において「決定的な支援者」になっていると警告。「これは止めなければならない。世界における中国の地位にも影響する」と語った。
民間企業の人事部長から政治家に転身し、優れた対人スキルで知られるルッテ氏は、困難な状況にも対処できることを示してきた。14年近くオランダ首相を務め、深い人脈を築いている。