【生産現場見学会】産業の担い手育成を(11月19日)
喜多方市は来月、中校生と保護者による市内の製造業者の見学会を初めて催す。将来的な労働人口の先細りが懸念される中、地域産業の担い手確保につなげる狙いがある。地元で操業する企業と「ものづくり」への関心を高め、地元への就職希望者を増やす契機としてほしい。 「キタカタオープンファクトリー2024」と銘打ち、市内の中学・高校合わせて9校を対象としている。近隣市町村の学校にも参加を呼びかけている。精密部品の金属加工業者など10社が受け入れを予定している。世界有数のシェアを誇る生産用機械の設計・製造メーカーも含まれる。それぞれ業務内容を解説するほか、一部企業は実際に、ものづくりを体験してもらう。普段は触れる機会の少ない身近な事業所の優れた「技」に理解を深める絶好の機会となる。 2020年国勢調査によると、市内の就業者数は2万2149人で、20年間で約7300人減少している。1、2次産業は顕著で4~5割も少ない。市内に勤務する市民は71%で、5年前の調査より3ポイント低下した。
高卒者の大都市圏への流出が続き、「若い世代の就職希望が少なくなっている」との声が商工関係者から上がっている。地方の人口減少が加速する中、市と商工団体は今後ますます働き手の確保が難しくなり、産業の活力が失われてしまうとの危機感を強めている。若者の地元定着への取り組みは待ったなしだ。 見学会では、生産技術だけでなく、人口動態なども含めた地域の将来像を参加者に伝えてはどうか。「豊かな古里をつくるのは自分たち」との自覚や責任感が生徒に芽生えれば、事業の意義は高まる。来年度以降も継続的に開催するとともに、小学生を対象に加えるなど、早い時期から職業意識を身に付けてもらう発展的な取り組みも求めたい。 市は2024(令和6)年から5年間の市工業振興ビジョンの策定を進めている。中長期的な方向性として「地域の特性を生かした力強い産業づくり」を指針に掲げた。基幹産業である農業との商工業の連携、市内に拠点を置く先端的な企業を核とした産業や事業所の集積などを推進し、就労の受け皿づくりも急ぐべきだ。(石井賢二)