ロービームの夜間運転は高リスク 超ハイテクヘッドライトで事故減らせるか
この他に、ヘッドライト前方に可動式遮光板を用意して部分的な減光を実現する方式や、多数のLEDヘッドライトをゾーニングして、照射の必要な方向に合わせてオンオフを切り替える方式がある。技術的にもっとも凝っているのはアウディの「マトリックスLEDヘッドライト」で、左右のヘッドライトは50個のLED光源で構成されており、この光源そのものを左右方向だけでなく上下も含めて状況に応じて操作する。対向車や先行車への減光だけでなく、歩行者に対して光を点滅させることで車両の接近を警告するなどの仕組みも搭載されている。
「ぶつからないブレーキ」との関連
しかし、現在のところこれらのシステムはまだまだ発展途上にある。実際に使ってみたユーザーは「対向車からパッシングされました」というケースもあり、減光のコントロール精度は今一歩というところのようだ。 ただし、現在急速に普及している「ぶつからないブレーキ」との兼ね合いを考えると、このアダプティブヘッドライトは極めて重要な意味を持っていることがわかる。照射範囲が広くなり、カメラで障害物がしっかり認識できるようになれば、夜間の事故リスクそのものを減らすことができるだろうし、最終的な衝突速度が抑制できれば、夜間だけ死亡事故リスクが高いということへのソリューションになる可能性があるのだ。 そして、近未来に予見されている自動運転においてもこのアダプティブヘッドライトが果たす役割は大きなものになるだろう。アダプティブヘッドライトは自動車の新時代を照らす大きな光となる可能性があるのである。 (池田直渡・モータージャーナル)