有村智恵が松山英樹の「珍しい表情が見られた」と語る、パリオリンピック銅メダルの価値
【松山英樹は銅メダル獲得も「なんでこれが入らなかったんだろう」】 ――松山選手にとっても、パリ五輪は特別な大会になりましたね。 松山くんは、前回の東京大会でのメダルをかけたプレーオフで(銅メダルを)逃していて、今回も最終日に東京大会と同じような順位で回っていたので、そこでメダルを獲るか獲らないかっていうのはすごく大きな差があったと思います。 でも、ショットはいいところについていても、なんでこれが入らなかったんだろうっていうパッティングがいくつかあったので、もしかすると本人としては、すごくうれしい銅メダルというよりは、ちょっと悔しさも残った銅メダルなのかな、という気もしています。(銀メダルのプレーオフがかかった)最終日の最終18番ホールのバーディーパットも、ミスヒットした感じには見えませんでした。 でも、(銅メダルという)結果が出てから表情が崩れるというか、穏やかな顔になる松山くんもめずらしいですよね。私にはずっとこのタイトルが欲しかったんだろうなっていう顔に見えたので、松山くんのそういう表情が見られただけでもうれしい気持ちになりました。 ――けっこうタフなグリーンだったんでしょうか。 (現地で見ていないので)細かいところまではわからないんですけど、PGAの選手たちが打った4、5メートルのパットが、カップをかすらずに全然違うラインで抜けていったりしていて、「けっこうラインが違うな」って思った場面が多かったので、読みもすごく難しかったのかなと。 ――日本と海外とでは、グリーンの芝の違いもあると言いますよね。 日本のグリーンって、芝質がすごく綺麗なんですよね。ベントグリーンは癖がないですし、コーライグリーンはちょっと癖があるんですけど、基本的にあまり癖がない綺麗なグリーンが多い。ですが、海外はどちらかと言うと、芝が立っていたり、カタビラ(※スズメノカタビラ)が混ざっていたりと、芝質自体に癖があることが多いので、ちょっとでもミスヒットしたらカップと全然違う方向に転がっていってしまいます。なので、できるだけ芯でヒットして、ボールの回転数をしっかり上げていかないといけないイメージはありますね。 ――癖の強いグリーンだと攻めるゴルフも難しそうです。 オリンピックに関しては、(メダルを貰える)上位3人以外は順位が関係ないじゃないですか。普段のシーズンだと、4位と30位とでは賞金もポイントもだいぶ違いますから、できるだけ上で戦うためにも、ここは攻めない、ここは攻める、という戦略があります。ですが、4位以下は意味がないわけじゃないけど、4位以下はみんな一緒のオリンピックでは、攻めていく状況が比較的多かったのかなと思います。 女子もリディア(・コ選手)が独走かなと思っていたら、結局最後は2位と2打差がつきましたが、途中で1打差まで詰め寄られる場面もありましたよね。メダル争いに絡んでいる選手にとっては、守る場面は誰ひとりとしてなかったと思うんです。 男子は男子で、途中5位や6位にいた選手たちでも、ひとつバーディーを取ったら一気にメダルが見えてくるような位置だったので、攻めないといけない――けれど、攻めた結果、ダブルボギーになったり、ボギーになってしまったりと、戦い方が普通のトーナメントとはちょっと違うところがありましたね。 (後編「メダルを逃した山下美夢有 明暗を分けた2打」につづく) 【Profile】有村智恵(ありむら・ちえ)1987年11月22日生まれ。プロゴルファー。熊本県出身。10歳からゴルフを始め、九州学院中2年時に日本ジュニア12~14歳の部優勝。3年時に全国中学校選手権を制した。宮城・東北高で東北女子アマ選手権や東北ジュニア選手権、全国高校選手権団体戦などで優勝。2006年のプロテストでトップ合格。2007年は賞金ランク13位で初シードを獲得した。2008年6月のプロミスレディスでツアー初優勝。2013年からは米女子ツアーに主戦場を移した。2016 年4月の熊本地震を機に日本ツアーへ復帰。2018年7月のサマンサタバサレディースで6年ぶりの優勝を果たすなど、JLPGAツアー通算14勝(公式戦1勝)をあげる。2022年に30歳以上の女子プロのためのツアー外競技「LADY GO CUP」も発足させた。2022年11月に、妊活に専念するためツアー出場の一時休養を表明。2024年4月に双子の男の子を出産した。 ◆インタビュー動画はこちらから
text by Sportiva