【有馬記念】タイトルホルダーの本領発揮に期待 穴馬はスタミナ豊富な一昨年の2着馬ディープボンド
例年よりも馬場が軽く、経済コースを立ち回れる馬が有利
中山Aコース使用8日目。芝育成の技術向上が著しい現代でも冬の開催は芝の維持が難しいようで、有馬記念の週は馬場の内側が悪化し、外差しが有利になる年もある。近2年は馬場がタフで、外差しが決まったが、今年は例年と比べると馬場が軽く、内からでも十分に粘れる状態となっている。 【有馬記念2023 注目馬】完成度と安定感◎、タフなレースは最大限に力を発揮できる舞台! SPAIA編集部の注目馬を紹介(SPAIA) ペースはおそらく今回も逃げることが予想されるタイトルホルダー次第だが、今の馬場だとそこまでペースを上げていかないだろう。土曜・グレイトフルSのホウオウエクレール(岡田スタッド×横山和騎手)のように、逃げなかった場合は、捲りが発生しそうで怖い。しかし、平均ペースで行ければ前と内が有利の決着になる可能性が高いので、今年の有馬記念はそういう想定で予想を組み立てたい。
能力値1~5位の紹介
【能力値1位 ジャスティンパレス】 今年の天皇賞(春)で悲願のGⅠ制覇を達成した馬。同レースは1番枠から五分のスタートを切ったが、そこから押して枠なりで中団まで上がって追走。スタンド前で中目に誘導し、向正面ではディープボンドをマーク。3~4角では同馬を追い駆けてじわっと進出し、4角では2列目の外。直線序盤ですっと伸び、早めに抜け出したディープボンドの外に出されると、楽に同馬を交わしてリードを広げ、2馬身半差で完勝した。 天皇賞(春)は逃げたタイトルホルダーの故障の影響もあり、3角手前から大きくペースが緩んだ。そこを外から上手く押し上げたことが功を奏した面はある。しかし、その後の宝塚記念でも3着、天皇賞(秋)でも2着に好走しているように、本馬はここへ来ての地力強化が著しく、イクイノックスが引退した今となっては、現役トップクラスの存在だ。 しかし、天皇賞(秋)は世界レコードが出たように、コンクリート馬場でレースが緩みない流れ。6番枠から出遅れて後方から2番手を追走し、3~4角では後方最内からロスを最小限に乗り、直線ではプログノーシスの後ろからスムーズに外に出されての2着好走と、展開も位置取りも噛み合ったもの。中山芝2500mはステイヤー寄りの適性が求められる舞台で、適性面での問題はないが、前走、展開に恵まれたことで能力を引き出されているので、今回は余力面に不安が残る。 【能力値2位 タイトルホルダー】 一昨年の菊花賞馬であり、昨春は天皇賞(春)と宝塚記念を連勝した馬。ステイヤーだが、2200mまでは守備範囲で、昨年と今年の日経賞を二連覇しているように、この舞台も得意だ。4走前の日経賞は極悪馬場だったが、2番枠からまずまずのスタートを切って迷いのない逃げ。スタンド前ではマイペースだったが、向正面からは淡々とレースを進めて3~4角で加速。この時点で後続はバテ始めるが、仕掛けを待って2馬身差のリードで直線へ。そこからはどんどん差を広げて8馬身差で圧勝した。 昨年の有馬記念では9着だったが、同レースはダートのような極悪馬場で行われた凱旋門賞(最初の400mはほぼ平坦で、残り600mは10mほどの上り坂)で、ブルームにプレッシャーをかけられたこともあり、オーバーペースで逃げて消耗度の高いレースをした後の一戦。日本馬よりもスタミナがある欧州馬でもまずやらない消耗戦に持ち込んだことで、疲れが出ていたものと推測される。 しかし、今年は前走のジャパンCでは完調手前だったこともあり、無理をさせない走り。3番枠から好スタートを切ったが、外からパンサラッサがハナを主張すると、同馬を行かせてその2番手を追走。ぶっ飛ばして行く同馬に対して、距離を取って控えて行く。本馬の直後にイクイノックス、その直後の内にリバティアイランド、外にスターズオンアース、その直後にドウデュースというような隊列で実質は脚をタメる差し競馬。結果、後続馬の決め手に屈したような負け方だったが、消耗度は少ないはず。 持久力型の逃げ馬というのは、ジャックドールしかり、ペースを上げていかないと批判されやすい。しかし、馬の手応え(調子)が悪い場合もあり、行かせないことがその先を含めて正解の場合もある。今回は状態も良く、陣営から「積極的な競馬で」と指示が出ているようなのである程度ペースを引き上げて行くだろう。 また、ジャパンCで先着を許したスターズオンアース、ドウデュースは、前走が目標でそこまで余力が残っていないはず、と見ている。今回アイアンバローズがハナ宣言をしているが、中山芝2500mは前半に坂があって、ここでリードを広げようとしてもたいして広げられないうえに消耗するので、ペース次第では2番手でもいいと見ている。 競馬関係者やファンに散々叩かれて、ぶっ飛ばすしか選択の余地がなかった天皇賞(秋)のジャックドールのようにならないかと心配だが、普通に走ってくれば最有力だ。昨年の宝塚記念のようにラスト4F目(中山芝2500mだと3角手前)から仕掛けていけば勝ち負けになると見ている。 【能力値3位 スルーセブンシーズ】 今年の宝塚記念では、世界最強の座に君臨したイクイノックスにクビ差の2着と脅威を与えた馬。しかし、この宝塚記念のイクイノックスはスタート直後で躓きかけて挟まれそうになったため、ブレーキを掛けて中団、最終的に最後方付近まで下げてからの追走になったことや、3~4角では大外からジャスティンパレスに蓋をしながら位置を押し上げて、4角でやや膨れるなどのロスが生じ、本来の能力を出し切れなかった。イクイノックスが古馬になってから最も指数が低かったレースがこの宝塚記念である。 宝塚記念は先行争いの激化で、先行馬壊滅の展開。本馬は6番枠から出遅れ、そこから押して追走しながらも、好位~中団が横に広がって先行争いが激化するのを察知すると、コントロールして最後方待機という勝負に出る。3角では内を通したが、そこから徐々に外に誘導してイクイノックスを完全マーク。 4角でイクイノックスが大外という状況下でその内を通して我慢させたが、そこでイクイノックスに蓋をされ、ブレーキ気味で直線へ。序盤で包まれたが、進路を中目に切り替えて3列目に上がり、ラスト1Fでしぶとく伸びてイクイノックスにクビ差まで迫った。 宝塚記念は騎手が展開に嵌めたもので、上位入線馬の中ではもっとも上手く乗られている。しかし、先行馬壊滅の展開で、直線で詰まる不利がなければ、本馬が勝っていた可能性もあったと見ている。今年の凱旋門賞は良馬場でも軽い方で、タイトルホルダーが出走した昨年とは全く違う馬場なので、ここは敢えて触れないが、ロンシャンでも出遅れて後方からの追走になってしまうような馬なので、展開と進路取りが全てと言ってもいいような馬である。 今回はさすがに宝塚記念のような展開とはならないだろうが、タイトルホルダーがペースを本気でレースを作りに行った場合には展開に恵まれるし、中山芝2500mなら3角手前から位置を押し上げることもできる。仕掛けのタイミングが上手い、通称「グランプリ男」が鞍上だけに警戒はしておきたい。 【能力値4位 スターズオンアース】 デビュー当初はそこまで目立つ馬ではなかったが、一戦ごとの成長力に想定以上のものを見せて桜花賞、オークスを連勝した馬。特にオークスは道中のペースが上がらない中で、18番枠から五分のスタート切って、中団前目の位置を外からキープしたまま3~4角の外を回るロスの大きい競馬。それでありながら3歳春の時点としてはなかなかの好指数で、スタミナが相当高いレベルにあることをこの時点で感じさせた。 前走のジャパンCでは得意の距離になったこともあって、休養明けながら能力発揮。ここでも17番枠と外枠だったが、五分のスタートを切って、タイトルホルダーをマークして勝ちに行くイクイノックスの直後をリバティアイランドと並走しながら追走。直線序盤での伸びは地味でリバティアイランドにすぐに前に出られたが、徐々に差を詰める形で、同馬と1馬身差の3着に食い込んだ。ほぼ完璧な騎乗でここでは自己最高指数を記録した。 今回、中山芝2500mになることは距離適性面としてはプラス材料。東京芝2400mほどキレを要求されないという意味でもいいだろう。ただし、今回は休養明けのジャパンCで自己最高指数を記録した後の一戦となり、疲れがどうしても懸念される。こういった時はイクイノックスの宝塚記念時のように、行きっぷりが悪くなりがち。今回は大外枠ということもあり、乗り方が難しくなりそう。能力はとても高い馬だが、楽な戦いにはならないだろう。 【能力値5位 ドウデュース】 海外遠征ではタフな馬場で結果を出せなかったが、帰国初戦の京都記念では独走V。同レースでは12番枠から出遅れ、コントロールして後方で我慢をさせる。向正面で馬群が凝縮したところを、中団の外まで上がって3角へ。3~4角では外から押し上げるマイネルファンロンを目標に動いて、4角では3列目。直線序盤で同馬の外に出されると、グンと伸びて一気に先頭。ラスト1Fをそのまま突き抜けて3馬身半差で完勝した。 前記の京都記念は欧州遠征で全く能力を出せなかったことからエネルギーが溜まっており、異様な強さだった。このことからも、現状はスタミナにやや不安があるが、瞬発力は一級品ということがわかる。今秋初戦の天皇賞(秋)では、急遽、戸崎騎手に乗り替わったこともあり、出たなりで位置を取って、3角ではイクイノックスの後ろと、勝ちに行く競馬。結果、ラスト2Fで鈍化し、前から離されてしまった。前走のジャパンCではリバティアイランド、スターズオンアースの直後と、ワンテンポ脚をタメて4着と善戦した。 今回は東京芝よりは時計の掛かる中山の芝、さらに距離も延びる。今回は再び武豊騎手へと乗り替わり、目いっぱい脚を溜めてスタミナを温存する競馬ならチャンスはあるが、前走比でプラスとなる材料が少ないことは確かだ。