「フジ、みんなの力で咲かせて」遺志受け継ぎ 今年も見ごろに
大阪府泉南市信達牧野の熊野街道沿いでフジが見ごろを迎えている。丹精込めて育てた元小学校長の梶本昌弘さんが2008年に79歳で亡くなり、その遺志を受け継いだ地元の保存会が手入れを続け、今年も薄紫の花を咲かせた。【中村宰和】 【写真で見る】弘前公園の「ピンクのハート」 梶本さんの妻が1987年、生け花で残った約40センチのフジ1株を自宅の庭の片隅に植えたのが始まりで、大事に育ててつるが伸び、花を咲かせた。近所の人が見に来るようになり、庭を開放した。01年には約1万の花房に増え、第1回フジまつりを開いて約1万5000人でにぎわった。 生前、梶本さんは「街道の名物にするつもりはなく、たまたま植えたフジは愛情が行き過ぎてたくさんの花房をつけるようになった。私の寿命は限られ、みんなの力で花を咲かせてほしい」と語っていたという。そして「このフジを訪ねる人にやすらぎを、去り行く人に幸せを」との言葉を残して亡くなった。 地元の有志が保存会を結成し、1本の木の藤棚は幅30メートル、奥行き27メートルで、約4万房になった。藤棚は甘くさわやかな香りに包まれる。 保存会は5人が中心になって手入れを続け、会長を務める梶本さんの長男和宏さん(68)は「肥料やりやつるの剪定(せんてい)、落ち葉の掃除など手入れは大変だけれども、来てくれた人が『ありがとう』と言ってくれるのはうれしい。父は喜んでいると思う」と話している。 初めて訪れた和泉市の門脇秀子さん(67)は「素晴らしい。地元の人の尽力のおかげだと思う」と感想を口にした。 ◇24日までまつり 24日までフジまつりが開かれ、階段を上って高さ約3メートルから藤棚を眺めることができる。ぜんざいや雑貨、花などの販売もある。