JR各社が開発加速、新幹線「自動運転技術」の現在値
新幹線の自動運転に向け、技術開発が進んでいる。JR東日本は2028年度に上越新幹線で、JR東海も東海道新幹線に28年度以降、JR西日本は29年度に北陸新幹線で導入を目指す。いずれも当面目指すのは、運転士が乗務して速度制御や停止を自動化する「自動化レベル2(GoA2)」。背景には人口減少による人手不足をにらんだ働き方改革への対応がある。(高屋優理) JR東日本が28年度に導入を目指すのは、長岡―新潟新幹線車両センター間の営業列車と回送列車の自動運転。また、29年度には新潟―新潟新幹線車両センター間の回送列車で、運転士が乗務しないドライバレス運転「自動化レベル4(GoA4)」の導入を目指す。24年9月から地上設備や車両改造などの工事に着手した。 JR東日本はJR西日本と技術協力しており、JR西日本は29年度に北陸新幹線の敦賀―金沢間でGoA2の導入を目指している。24年12月に公開した走行試験では、開発中の自動運転システム「省エネ運転支援装置」について、加減速や停車の定時性、正確な停止位置、走行電力量の省エネ効果などの走行制御機能を確認した。 JR西日本がJR東日本と協力して開発を進める自動運転システムは、運転士が出発ボタンを押すと、走行区間のトンネルや勾配など設備条件から演算して運転パターンを作成。停止位置に近づくと徐々に減速し、地上子により停止位置までの距離を把握しながら自動制御して停止し、停止時の操作は必要ない。省エネルギー運転も追求しており、省エネ運転支援装置は空気抵抗を考慮し、惰行時間を長くし、従来に比べ、電力消費量を5―10%低減することを目指している。 JR東海も28年度以降に目指すのはGoA2。東海道新幹線の自動運転には駅間の長さとダイヤへの対応が必要となる。駅間が長い新幹線は加速、惰性を何度か繰り返す必要があり、現状は運転士が操作している。加えて東海道新幹線はピーク時に3分間隔の過密ダイヤ。これらを解決すべく、21年から本線で試験を実施し、技術開発を進めている。 各社が自動運転を導入する狙いは、運転の安全性や輸送安定性の向上のほか、働き方改革への対応がある。JR西日本の折中啓也常務執行役員は「まず運転士が乗務している状態での自動運転を目指す。運転士を運転操作から解放し、車掌と安全確認やトラブル対応などができることで、安全性の向上につなげる」と話す。このほか空気抵抗などを考慮し、加速やブレーキを最適化することは、省エネ走行にもつながる。 JR東日本は30年代中頃に、まず東京―長岡間の営業列車にGoA2を導入し、さらに東京―新潟間でGoA3を導入する。その上で東京―新潟間の回送列車にGoA4を導入する計画だ。また、上越新幹線だけでなく、北陸新幹線や東北新幹線への展開も視野に入れ、技術開発や走行試験を進める。