「新卒の給料は19万」元消防士が語る厳しい懐事情。転職するにも「他の職業で活かせるスキルがない」
運転代行やホスト、YouTuberなど、副業をしていた消防士が行政処分を受けたというニュースを時折目にする。公務員として安定した職に就いているにもかかわらず、なぜ彼らはリスクを冒してまで副業に手を出すのだろうか。 今回は、30歳で消防士を辞め、現在は家業を継いでいるAさんにその裏側を聞いた。ちなみに、Aさんの元同僚にも副業が発覚して懲戒処分を受けた者がいるという。
新卒の給料は19万「家賃と光熱費を払うので精一杯」
「大卒1年目の給料は19万円、高卒の同僚は16万円でしたよ」とAさんは振り返る。 総務省が発表した「令和3年4月1日地方公務員給与実態調査結果」によると、全国の消防士の大卒の給料は約21万円、高卒は約18万円。物価高騰が続く中、家賃や光熱費の支払いで手一杯で、趣味や娯楽にお金を使う余裕はないという現実がある。そうした背景があるとするなら、副業に手を出したい気持ちは理解できる。だが、地方公務員法では「営利目的での仕事や私企業の経営は原則禁止」と定められている。 「『任命権者(一般的には市町村の長)から許可を得ない限り、報酬を受ける業務には従事してはならない』という法律です。ただし、任命権者の許可があれば、副業や兼業が認められることもあります。でも、僕の同僚で、副業を許可されたという話は聞いたことありません。みんなお金がなくて、30歳近くでも実家に住んでいる人もかなりいました」 自治体ごとに基準は異なるが、投資や不動産など一部の副業は認められていることもある。例えば、小規模な不動産投資や、先祖が営んでいた農業を継ぐことが許可されるケースもある。
「同僚による匿名の通報」で発覚することが多い
ただし、必ずしも許可が下りるとは限らず、自治体によっては非常に厳しい基準が設けられている。そのため、規則の範囲外で副業を行う者が後を絶たないが、発覚すれば一大事だ。 2022年には和歌山市でゲーム実況を配信していた消防士が減給10分の1(1か月)、2023年には前橋市でホストクラブで働いていた消防士が停職3カ月の懲戒処分を受けた。 「副業が発覚するのは、住民税の増加がきっかけであることが多いですが、実際には同僚が匿名で通報することも少なくありません」