食物アレルギー発症「園に責任を問わない」と同意書求める 鳥栖市の保育施設が保護者に 佐賀県が「不適切」と指導
鳥栖市内の保育施設が食物アレルギーのある園児(5)の保護者に対し、園生活で発症しても「園に責任を問わない」とする同意書の提出を求めていたことが2日、分かった。保護者は応じず、園児は退園した。アレルギーの有無は園児を預からない理由として認められておらず、県は不適切な対応だったとして同園を指導した。 子ども・子育て支援法は、保育施設は正当な理由がなければ利用を拒んではならないと定めている。「定員に空きがない」などは正当な理由とされるが、アレルギーは該当しない。 園児はごまのアレルギーがあり、昨年9月、同園の給食の後にアレルギーの症状を発症して2週間の通院を要した。原因は特定できなかった。園児に自己注射薬エピペンを携行させることになり、対応を巡って同園は県に相談した。県はエピペンは応諾義務があると説明し、給食の誤食防止対策も指導した。同園は給食のメニューからごまを廃止し、園児につく職員を増やすなどして対応した。 同園は昨年12月下旬、園医の勧めで同意書に署名して提出するよう保護者に求めた。書面には、園生活で発症した場合に「園に一切、責任・補償を問わないことをお約束します」などと記されていた。鳥栖市に申請して園児は1月半ばに転園する予定にしていたが、保護者は「1月以降も在籍するならサインをもらわないと預かれないと言われた」と話し、同意書を提出せずに退園の手続きをした。 県が1月に実施した監査の際、園児が退園し、その前に同意書を求めていたことが発覚した。県はアレルギーが園児を預からない理由にはならないのに加え、同意書の内容の問題性を指摘。保護者と保育施設が書面を交わすケースは対応方法に関する両者の協議事項を確認したり認識を合わせたりすることが想定され、「何の説明もなしに『責任を負わない』と言い切る内容は見たことがない」などとして指導した。 同園は佐賀新聞の取材に対し「自分たちは転園予定を知らず、預かり続けるつもりで対応し、退園は促していない。同意書は対応に万全を期す趣旨だったが、内容が分かりづらかった」としている。(樋渡光憲)
樋渡光憲