東大に「トイレの研究」で推薦合格、変わる入試で重視されるのは個性 推薦で大学に入る割合が急増
推薦で大学に入る生徒の割合が50%超に
東北大学が昨年、「全面的に総合型選抜入試に移行したい」と、一般入試を廃止する意向を示したことは大きな話題となった。いまや私立だけでなく、国立大学でも推薦入試が積極的に行われるようになっている。そこで求められるのは「個性」と話す東大生作家の西岡壱誠さんに、東大ではどんな子が推薦で入学してくるのか、話してもらった。 【写真を見る】東大生作家の西岡壱誠さん 大学入試では今、激変が起こっています。今までの大学入試は、ほとんどの大学でペーパーテスト一本での入試が行われていました。試験問題自体の特色はあっても、基本的には「どれだけきちんと学校の勉強をしてきたか」だけで評価が決まっていました。 しかし今、一般選抜(従来の一般入試)以外に、総合型選抜(従来のAO入試・推薦入試)、学校推薦型選抜(従来の学校推薦入試・指定校推薦入試)の割合が急激に増加しています。これらの入試では、学校の勉強「以外」も評価の対象になります。学力以外の要素、その人の個性が評価される時代になっているのです。 例えば、文部科学省が公表した「大学入学者選抜の実態の把握および分析等に関する調査研究」(2023年2月)によると、大学入試全体での一般入試の割合は49.7%に対し、学校推薦型選抜31.0%、総合型選抜19.3%で、学力で大学合格を目指す一般入試よりも推薦型・総合型をあわせた割合の方が多くなっていることがわかっています。
東北大は「全面的に総合型選抜入試に移行」の予定
私立大学だけではなく、23年度入試で総合型選抜を実施する国公立大学は104校と年々多くなってきています。有名な大学だと、東北大学は約3割の学生が一般入試以外で入学していることがわかっており、また昨年には「全面的に総合型選抜入試に移行したい」と発表、一般入試を廃止する予定との意向が示され、大きな話題になりました。 これらの入試形態が主流になっていくと、「個性」の部分、つまりは「その人の突き抜けた部分」が評価されていきます。例えば、法政大学の文学部地理学科では、自己推薦入学試験要項の最初に、このような文言が書かれています。 法政大学 2023年度 文学部地理学科 自己推薦入学試験制度について 文学部地理学科では、2004年度より自己推薦入試を実施しています。この入試制度は、従来実施している一般入試・大学入学共通テスト利用入試とは別の選考方法・基準により入学者を募集するものです。地図を眺めていると時間を忘れてしまう人、三度のメシより地理が大好きだという人、そんな人の応募を歓迎します。選考方法は、第一次選考として書類審査(調査書、志望理由書)を行い、その合格者に 対して第二次選考(筆記試験「地理B」、面接試験)を行います。 なんと、「地図が好き」「地理が好き」という人を募集する、というのが大きく表明されているのです。このように、「1つの分野について突き抜けた個性を持っている人かどうか」が評価されるのが、選抜入試の特徴だと言えるでしょう。学校の成績がいいか悪いかではなく、突き抜けた個性があるかどうかが評価の対象になっているということがわかるでしょう。 実は東京大学も、2016年度入試から学校推薦型選抜入試を行っています。一般入試で合格する人の人数が3000人程度なのに対して、東大の推薦入試の定員はわずか100人。今年で9期になりますが、合格者は1000人にも満たない人数になります。 その試験形態は学部によって細かい部分は異なりますが、基本的にはどの学部でも、志望理由書の提出を求める1次試験と、その後で教授の面接も含むさまざまな形態の試験を課す2次試験とに分かれていて、その後に実施される共通テストの点数の結果を加味して、合格不合格が判断されます。 学部によって、この2次試験の内容が分かれるのが特徴です。例えば教育学部ではポスターセッションと呼ばれる発表が課されます。A0判のポスター1枚の持ち込みが認められ、そのポスターを使って自分の今までの活動に対する発表を行い、そのほかの受験生も参加して質疑応答が行われるというものです。 そしてそれが終わった後では、東大の先生を含む面接官との個別面談が課され、質疑応答が行われるのだそうです。あくまでこれは教育学部の事例であり、例えば法学部ではグループディスカッションが課されるなど、まったく異なる形態の試験が課されます。