<青の球春・’24センバツ・山梨学院>/下 肉体改造で進化 新バット対策、冬に2倍の成長目指す /山梨
「一冬で二冬越す」。甲府市内にある山梨学院の練習拠点「砂田球場」の三塁側ベンチに置かれた額に書かれた言葉だ。その意味を吉田洸二監督(54)は「この冬で、2年分ぐらい成長しましょうということ。うまくない選手だって、やりようによって成長は2倍。レギュラーは固まっておらず、チャンスはある」と解説する。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 今春のセンバツから、投手の受傷事故防止を目的に反発性能を抑えた新基準の金属製バットに移行する。最大直径を67ミリ未満から64ミリ未満に縮小するなどし、従来より打球は飛ばない。新チームは1年生が多く、体づくりは例年以上の課題だ。 新たに始めた打撃練習の一つが、直径約1メートルの大型タイヤ打ち。長さ約85センチの鉄棒をバットと同じ握りで持ち、棒を肩に担ぎ両手を頭の上に振りかぶり、直立したタイヤに向けて力いっぱい振り下ろす。棒がタイヤと当たって跳ね返るのを押さえ込もうとすることで、握力と腕の筋力が鍛えられる。 昨秋の関東大会で9番を打ち、打撃強化が課題の針尾泰地(2年)は「打撃フォームを意識し、両腕と胸が三角形になるようにしている」と話す。 重さ約7キロの丸太を抱えてダッシュする伝統の「丸太走」に加え、下半身強化を目的に新しく取り入れたのが「ケンケン走り」。後ろに回した左手で右足首を握り、左足で片足跳びをしながら砂場を約40メートル走る。戻る時は左右を入れ替え、バランス感覚も培われる。途中で倒れると、コーチから「やり直し!」の声が入る。 チーム一の俊足の黒沢后琉(こうりゅう)(同)は「ふくらはぎが痛い。でも瞬発力がつきそうだ」と話した。目標タイム内での往復が要求され、息が上がっていた。 「片目をつぶったまま、両手の人さし指を近づけても、指同士がくっつかないでしょ。両目のチームワークが悪いとずれてしまう。両目の見え方をしっかり合わせることがビジョントレーニングの第一歩」 センバツ出場が決定した翌日の1月27日、選手たちはペンとノートを片手に中村尚広さん(54)の話にききいった。中村さんは長崎県に住む視力機能測定の専門家(オプトメトリスト)。プロ野球のオリックス、中日の選手たちや、プロボクシング元世界王者の村田諒太さん(38)らに対し、両目のバランス良い動きや機能を高めることで動体視力を上げ、視野を広げる指導をしてきた。 同い年の吉田監督が同県立平戸高を指導していた頃からの30年近い付き合いで、吉田監督が2009年に同県立清峰高を率いてセンバツを制した時も、山梨学院の歴代の選手たちも世話になってきた。 外野フライを背走して追う時の視線の向きを質問した主将の中原義虎(2年)は「ためになった。目のトレーニングは継続が大切なので、チームとして取り組む」と話した。史上4校目の春連覇へ向け、「視界は良好」だ。【佐藤薫、早川健人】