10回、血を流しながら攻める那須川天心＝有明アリーナ（撮影・今野顕）

2日間にわたる国内史上最大級のプロボクシング興行（13、14日、東京・有明アリーナ）の最終日が14日、行われた。WBOアジア・パシフィック・バンタム級王座決定戦は、キックボクシング42戦全勝で、同級1位の那須川天心（26）＝帝拳＝が同級2位のジェルウィン・アシロ（23）＝フィリピン＝に3－0の10回判定勝ち。ボクシング5戦目で初のタイトルを獲得した。日本国内での世界挑戦が可能となり、来年の世界初挑戦へ前進した。 那須川は勝者コールを聞くと、小さくうなずきながら何とも言えない表情を浮かべた。 「無事にアジアのベルトを巻くことができた。KOしたかったけど、研究されていた。ボクシングを10ラウンドできることは証明できた」 序盤は遠めの距離からいきなり強振してくるアシロの攻撃を警戒し、慎重に進めた。中盤から攻勢を強めたが、ディフェンスの良いアシロになかなか有効打を与えられなかった。9回に左ボディーストレートをヒットし、アシロがバランスを崩してダウンを奪う。10回にはバッティングで左目上をカットし、流血。最後まで倒しにいったがそのまま試合終了のゴングを聞いた。 7月20日に東京・両国国技館でWBA世界同級4位だったジョナサン・ロドリゲス（米国）に3回TKO勝ち。前戦の良い感覚を継続し、さらに磨きをかけてきた。ボクシングデビュー戦から約1年半。基本練習に真摯（しんし）に取り組み、ボクシングの動きが体に染みついてきた。基礎を習得して応用の段階に入り「突拍子もない動き、ボクシングでは普段はない動きだったりとか、宇宙系ボクシングを見せたい。ボクシングじゃないボクシングをする」と話していた通りに、足を回すような独特なステップなどを披露したが、3戦連続のKO勝利は逃した。 15歳でキックボクサーとしてプロデビューし、今回が格闘技の公式戦通算52戦目。初めてのカットで、「顔で売っているんだけど」と冗談を飛ばしつつ、「ボクサーだなと思った」としみじみ語った。 キックボクサー時代を含めて自身過去最軽量のバンタム級（リミット53・5キロ）で闘い、初のベルトを獲得。日本国内での世界挑戦が可能となった。世界ランキングはWBA、WBC3位、WBO12位。バンタム級はWBAが堤聖也（角海老宝石）、WBCが中谷潤人（M・T）、IBFが西田凌佑（六島）、WBOが武居由樹（大橋）と4団体の世界王座を日本選手4人で独占している。