日本を代表する彫刻家・小清水漸の作品を一堂に 「自分の感性を表現」 宝塚市立文化芸術センター
宝塚市在住の彫刻家・小清水漸の半世紀以上に渡る創作活動を、代表的な作品を通して紹介する企画展「小清水漸の彫刻 1969~2024・雲のひまの舟」が、宝塚市立文化芸術センターで開催されている。2024年10月15日(火)まで。 【写真】「小清水漸の彫刻 1969~2024・雲のひまの舟」展をのぞき見! 宝塚市立文化芸術センターでは、宝塚市にゆかりのあるアーティストを紹介する「Made in Takarazuka」シリーズを展開しており、今回が5回目・最終回となる。小清水漸は、戦後の日本美術史の重要な芸術動向のひとつである「もの派」を代表する美術家の一人であり、国内外で活躍する彫刻家。初期の作品から最新作まで、半世紀以上に渡る創作活動の中から代表的な作品を中心に紹介する。 天井からまっすぐ伸びた垂直線の先に吊り下げられた円錐形の分銅が、床の一点を指し示す『垂線』。1968年に神戸・須磨離宮公園で先輩の関根伸夫が発表した『位相―大地』の制作現場に立ち会った小清水が、触発され、翌1969年に発表した作品で、重力の起点(と思われる方向)に向けて錘鉛を垂らし、誰も見たことのない真の垂直線を眼前に表すことで重力を視覚化した。小清水が自らの制作の原点に立ち返ったとされる重要な作品とされる。 この他、複数の同形の木材の表面に異なる幾何学模様を配した『表面から表面へ』シリーズは、電動ノコギリで削られているが、どのような手を加えても「木」であることは変わらず、見た瞬間に作品のすべてが伝わることを意図して制作されている。「一部は木の香りも楽しめます」と、同センターの大野裕子キュレーターは話す。 作品を制作する台もその作品の一部となるという気づきから生まれたのが『作業台』シリーズで、「作業台」=「テーブル」の持つ無限の可能性が表現されている。『作業台―新月のアルテーミス』(1997年)は、ギリシャ神話に登場する狩猟の女神・アルテーミスが持つ弓矢を舟とオールに見立てた作品という。 木彫のレリーフ作品も。かつて小清水は「絵画でも立体彫刻でもないレリーフというどっちつかずの世界はすごく魅力があるのは確か」と語っており、「レリーフの表面はテーブルの天板の広がりにつながる」として、削ったり、素材の異なるものを埋め込んだりと様々な試みが作品の中で展開されている。描いている線が影に見えたり、また逆に針金が描かれた線の影に見えたりすることも。 企画展のタイトル「雲のひまの舟」の、「ひま」は隙間を指す。春先に雪解けが進んで所々で地肌が現れた隙間を表す俳句の季語「雪のひま」から取ったという。また「舟」について小清水氏は「私は宇和島(愛媛県)の生まれで、小さいころから海と舟は身近にあった。舟に乗ったらどこか知らない所に行けるという夢のような思いがあった。舟の形には人の夢をのせてどこかへ行ってくれるという感じがある」と話す。 屋上庭園では最新作のインスタレーション『武庫の水 空へ』が展示されている。色とりどりのガラス玉には水が入っており、光の当たり方や強弱によってその表情は変わる。鉄製の「舟」もあり、「ちょうど人1人が乗れるくらいの大きさで、人の気持ちをのせてくれる」ことをイメージしたという。 小清水は、「作品を誰に見てもらいたいか、思い浮かべながら作品を作っている。時には特定の誰かを思い描くこともあるが、漠然とその誰かを自分の中で思い描いている。自分で言うのもおかしいけど、見てもらいたい人をイメージしていると、どの作品も攻撃的ではなく柔らかい表現になっているような気がする」と話す。そして「日本人として日本文化の中で育ってきて、自然に身についている感性を素直に外に出すという気持ちで作品を作っている。見ている人も自分の感性と響きあうところがあるかなぁと思いながら見ていただくと嬉しい」と続けた。 小清水はこの企画展の後に傘寿を迎える。誕生日は「搬出作業が終わった頃かな?」。 ■Made in Takarazuka vol.5 「小清水漸の彫刻 1969~2024・雲のひまの舟」 会期 2024年9月14日(土)~10月15日(火) 会場 宝塚市立文化芸術センター 2階メインギャラリー・屋上庭園 (宝塚市武庫川町7-64) 休館日 水曜日 開館時間 メインギャラリー 10:00~18:00(入館は17:30まで) 屋上庭園 10:00~18:00(庭園エリアは入場無料)
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