「最後の質問」に立派だった明大・木戸主将の答え…帝京大に敗れ今季初黒星、その負けから何を学んで強くなるか
◇コラム「大友信彦のもっとラグビー」 関東大学ラグビー対抗戦グループの明大が、17日の帝京大戦に敗れ、今季初黒星。開幕からの連勝が5で止まった。 帝京大は2週前の早大戦に17―48で敗れ、21年から続けていた対抗戦グループの連勝が25でストップ。それだけに、下馬評では明大有利か? の声が多かったが…勝負は分からない。試合が始まると同時に帝京大は自陣深くからでも果敢にアタックを仕掛け、前半だけで5トライ。最終スコアは28―48。明大の神鳥裕之監督は「帝京さんの気迫と勢いにやられた。今日は帝京さんがすべて上回っていた」と潔く完敗を認めた。 もっとも、試合には負けても、明大に自信を失った様子はなかった。神鳥監督は続けた。 「我々も後半はしっかり戦って、スコアもイーブン以上だった。ここから立て直して、一戦ごとに成長していきたい」 実際、後半のトライ数は3―2。得点も21―15と明大が上回っていた。 ナンバー8木戸大士郎主将(4年・常翔学園)の思いも共通していた。 「前半は相手の土俵で戦ってしまった。後半は自分たちのラグビーができたけど、それを最初から出せなかったことに責任を感じています」 会見が進み、司会者が「最後の質問を」と促す。記者は木戸主将に「帝京大は早大戦と全然違うじゃないかと思いましたが、そう感じませんでしたか?」と、ちょっと冗談めかして聞いてみた。木戸主将は少しだけ表情を緩めてから答えた。 「帝京大は本来こういう力を持っている。早大戦ではその力を出せなかったけど、本来はこれだけの力があることを、4年間戦ってきた自分がみんなに伝えきれなかった。それがひとつの原因だと思います」 立派な答えだな、と思った。 大学ラグビーは、ひとつ負けてもシーズンは終わらない。負けから学んで強くなることができる。それは目の前で帝京大が実証したことだ。歴史をさかのぼれば18年度は明大が、19年度は早大が、それぞれ早明戦に敗れながら1カ月後の大学選手権で優勝を果たしている。 物語は起伏があるほど面白い。リーグ戦グループでは24日の最終節を残し5校に優勝の可能性が残っている。関西でも17日、「2強」と呼ばれた京産大と天理大が関西学院大と近大に敗れ全勝がストップした。 負けを経験した明大など各校が、その負けから何を学んで強くなるか。唯一全勝の早大は無敗のまま走れるのか。12月1日の早明戦そして1カ月後の大学選手権への道のりが、今から楽しみだ。 ▼大友信彦 スポーツライター、1987年から東京中日スポーツ・中日スポーツでラグビーを担当。W杯は91年の第2回大会から8大会連続取材中。著書に「エディー・ジョーンズの監督学」「釜石の夢~被災地でワールドカップを」「オールブラックスが強い理由」「勇気と献身」など。
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