丘みどり、亡き母の声「しっかりと歌いなさい」と聞こえたような気がする
大晦日に放送される「第68回NHK紅白歌合戦」の音合わせリハーサルが29日にNHKホールで行われた。今回、初出場の歌手10組のうち、唯一の演歌歌手となるのが丘みどり(33)だ。丘は最新曲であり、8万枚のセールスを記録しているヒット曲「佐渡の夕笛」を歌う。
デビュー13年目、亡き母と夢見た舞台へ
この日、オレンジとゴールドを基調とした華やかな能衣装をまとって舞台に現れた丘。「佐渡の夕笛」が能舞台をテーマにした歌のため、本番も、この能衣装で歌うという。 カメラリハーサルでは、スタッフの指示に対して、「ハイ、ハイ」と大きくうなずき、真剣な表情が印象的だった。続いて舞台上で立ち位置の確認を行い、羽織っていた着物をスタッフに脱いで渡すと、落ち着いた雰囲気のワンピース姿に。音合わせでは、「よろしくお願いします」とスタッフ陣に頭を下げ、一曲をのびやかに歌い上げ、一回でOKとなった。 今年の紅白歌合戦のテーマは昨年に続き「夢を歌おう」だが、丘にとって、紅白歌合戦はまさに悲願の夢の舞台であり、2006年に他界した母との約束でもあった。11月16日に行われた出場歌手の発表会見でも、丘は開口一番、「天国の母との約束がようやく果たせるなという感じです」と語っていた。 丘は、幼少期から民謡を習い、幼稚園の頃に祖母に連れられて行った鳥羽一郎のコンサートがきっかけで、「演歌歌手になりたい」と夢みるようになったという。その後も歌い続けた丘は、18歳で芸能界入りを果たす。ただ、デビューは夢だった演歌歌手としてではなく、5人組のアイドルの一人としてだった。どうしても演歌歌手の夢を捨て切れなかった丘は、事務所をやめて音楽の専門学校でボイストレーニングや歌の基礎を学び直した。そんな丘に転機が訪れたのは、関西のカラオケ番組で中村美律子の「河内おとこ節」を歌ったことがきっかけ。番組を見ていた演歌事務所の社長の誘いを受け、2005年に「おけさ渡り鳥」で念願の演歌歌手としてのデビューを果たした。 とはいえ、デビュー13年目で紅白の切符をつかんだ丘の道のりは、決して平坦ではなかった。デビュー翌年の2006年暮れに、丘のデビューを誰よりも喜んでくれた母親が、47歳の若さでがんのため他界。二人三脚でがんばってきた母の死によって、大きな支えを失った丘だが、つらいときに支えになったのは、母が残した「やらずに後悔よりやって後悔の人生を」という言葉だった。