「幻」のモダニズム建築、島根県庁の設計図を紹介 松江城天守から宍道湖に向けた眺望への配慮も 建築家・安田氏の熱量示す 県庁で15日まで企画展
島根県邑南町出身の建築家・安田臣(かたし)氏(1911~77)が手がけ、昨年秋に約60年ぶりに明らかになった「幻」の島根県庁の設計図を紹介する企画展が、松江市殿町の県庁玄関ホールで開かれている。松江城や宍道湖など周辺の景観に配慮した緻密な計画が図面から読み取れる。入場無料で15日まで。 【写真】公開された設計図の一部。テープで補修した後や安田臣氏の押印も残る
県庁舎は、機能性や合理性が特徴の「モダニズム建築」の一つで、世界的建築家の菊竹清訓氏(1928~2011年)が設計した県立図書館などとともに国の「有形文化財建造物」に登録されている。 設計図は昨年11月、職員が地下倉庫で竣工(しゅんこう)図と共に発見した。A1判のトレーシングペーパーで、それぞれ142枚。鉛筆で細密に手書きされ、破れた所をセロハンテープで補修した痕跡や、安田氏らの押印もある。職員が発見後、展示に向けて準備を進め、額装した8枚を並べた。 松江城にほど近いことから、安田氏らは天守閣から宍道湖に向けた眺望を遮ることがないよう、敷地の北西側に最大限寄せて建物を配置。玄関ホールは県産材を積極的に使い、受付窓口の壁面に「福光石」、床部分に「大根島石」を配置するといった表記がある。 現庁舎は、前庁舎が1956年に火災で焼失したことを受けて建設が急きょ決まり、約半年後に安田氏らが設計を完成させた。県庁周辺のモダニズム建築を研究し、設計図を発見した営繕課の井上翔太主任は「注ぎ込んだエネルギーの大きさが図面からにじんでいる。時代の雰囲気とともに県庁の建物の魅力を知ってほしい」と話した。
展示は平日午前8時~午後5時。日曜日の10日は午前10時~午後4時まで特別開放する。