Laura day romance、2024年第1弾シングル「Young life/brighter brighter」をリリース「諦めることで広がったというか切り取れる場面が大きくなった」
2017年に早稲田大学の音楽サークルで結成し、フォーキーでオーガニックなタッチでいて、洗練されたウェルメイドなポップスを紡ぎインディーシーンで注目を集めたバンド、Laura day romance(ローラデイロマンス)。ライブや作品を重ね、2022年にリリースした2ndアルバム『roman candles|憧憬蝋燭』は、ASIAN KUNG-FU GENERATIONフロントマン、後藤正文が立ち上げた新進気鋭のミュージシャンが発表したアルバムに贈られる作品賞・APPLE VINEGAR-Music Award 2023の大賞に選ばれ、その音楽は耳の肥えたポップ/ロックファンにも愛され、バンドの評価を高めてきた。 【全ての写真】Laura day romanceの撮り下ろしカット(全15枚) その流れに乗って、春夏秋冬の季節に連動したプロジェクト”Sweer Seasons,Awesome Works“として4連作でEPを発表し、バンドのレンジを広げながら進んできた1年を経て、1月31日に2024年第1弾シングル「Young life/brighter brighter」をリリースした。今作では、EPで広がったサウンドスケープを踏襲しつつ、リスナーの心に静かに、そして深く爪痕を残す歌が揃った。物語性を帯びた井上花月(Vo)のボーカルが冴え、ここからどこかへと新たな旅路へと連れ立っていく曲だ。 ニューシングル、そして2月には東名阪ツアーLaura day romance oneman tour 2024「We are who we are」開催を控えた3人に、今とこれからへの思いを聞いた。 ──2022年の夏から2023年の春にかけて、春夏秋冬の季節に連動したプロジェクト“Sweet Seasons,Awesome Works”で4連作のEPをリリースしてきました。挑戦的な作品にもなった4作のEPでしたが、今振り返ってバンドにとってはこの1年というのはどういう時間になったと感じていますか。 鈴木 迅(Gt) まず四季のEPのリリースをやり切って、さて次はどうしようかなというタイミングでメンバーの脱退やマネジメント形態が変わったりというのが続いて。さらに大きなイベント出演が決まったりと、なかなか作品について考えるまとまった時間がない状況となっていましたね。そのなかで次の作品に向かって進んでいこうということで、とりあえずたくさん曲を書いて考えようという感じではありました。 ──4連作EPでは手応えなり、いい感触は得ていた感じですか。 鈴木 そうですね。作品としての手応えもそうですけど、バンドのアイデンティティの裾野を広げられたというか。ここまでやってもLaura day romanceだとお客さんが思ってくれるんだという点では、自信になっていたかなと思います。 井上花月(Vo) EPでは、自分のキー的にかなり歌いやすい曲が多かったなと思っていて──。 鈴木 実務的な話(笑)? 井上 最初は、自分が歌が上手くなったのかなって思っていたんですけど、そうじゃなくて単純にキーが合ってきただけ、以前よりも歌いやすいキーにしてくれることが多くなってきたので、自分でコントロールしやすくなっただけなのではないかと。なので、自分を戒めながら歌に挑戦してましたね。 鈴木 結構、曲の作り方であったり、バンドとしていろんなことが定まってきたんだと思いますね。 井上 今までにないキーが低めの曲が並んだ作品もあったので、新たな一面も見せることができたのかなって思います。 ──礒本さんはどうですか。 礒本雄太(Ds) いろんなジャンルを取り入れて、演奏の幅を広げてきたEPだったんですけど。そういう実験的な作品のリリース後にバンドの体制が変わったことで、プレッシャーはありましたね。このタイミングで、例えばライブの規模感が落ちてしまうとか、迷走してるように見えてしまう可能性もあったから、そこだけはすごく怖かったんですよね。 鈴木 なんかメンバーというよりマネジメント目線だね。 礒本 そうかもしれない(笑)。昨年、前の事務所を離れた後に、一時期はメンバーでもありマネージャーでもありっていう仕事もしていたんです。自分では初めての試みでもあったので、ふたりとはまたちがう重圧があったんですけど、今はなんとか乗り切れたかなという思いですね。 ──試みがあるとともにバンドの体制が変わってと激動ではありましたが、EPリリース以降として、よりこういうバンドの面を見せていこうとか、より掘り下げたいというところはありましたか。 鈴木 Laura day romanceはずっと、“心地いい”とか“平和”みたいな見られかたをしていたんです。それは前回のEPでもそうだったんですけど、それだとなんか物足りないというか。自分たちがもらう評価としても、平和とか安心するとか思われたいわけではないなという気持ちも若干あったんです。そこを次のシングルでもっと踏み込んだことを言えたらなとは思っていた部分がありますね。EPの最後の方もそうだったんですけど。 ──4連作EPの最後『Sweet.ep』は、より衝動感があらわになっていたように感じます。「書きたい」とかはとくにそうで、鋭く迫る思いがありました。 鈴木 もっとバンドを立体的に見せたい気持ちがあったんですよね。 井上 でもなんで、“平和”って言われ続けてるんだろう、私の歌の感じなのかな。 鈴木 わからないけど、曲の手触りとかもあるんだとは思うけどね。 ──歌声の温度感や、サウンドやアンサンブルの質感から引き出される雰囲気かもしれないですね。温かく爽やかなタッチのサウンドと、ちょっと内省的な歌心でリスナーに寄り添う感覚が、平和とか心地よさにつながっているんだと思います。そこからもっと毒なトゲなりを出してもいいんじゃないかなという思いが芽生えていると? 鈴木 そうですね、摩擦というか。先ほど内省的なとおっしゃっていただけましたけど、そういう面を描いてきたところが多かったし、ひとりで完結している曲が多かったなと思うんです。これは今回のシングルにも繋がっていくんですけど、もっと自分と他者とか、そういった境界のなかで起こる摩擦みたいなものを描いていこうとか、そこで生じる何かを描こうというのはあったと思います。