「公務員出身者」だからこそ知っている「読み手に伝わる文章」3つの条件…正確に書く、わかりやすく書く、あと1つは?
「わかりやすく書く」ための3つのポイント
次の「わかりやすく書く」は、読み手が十分に理解できるように工夫することを指します。そのためのポイントとして挙げられているのが、次の3点です。 ・伝えることを絞る ・難しい用語を避ける ・必要に応じて図表を使用する 気をつけたいのは、わかりやすさを求めるあまり、読み手が欲しいと思っている情報までも取り除いてしまうことです。そうすると文章として意味を成さなくなってしまうので、価値ある情報を残しつつ、わかりやすい表現にアレンジする必要があります。 【元の文章】 量子コンピュータは、量子重ね合わせと量子もつれを利用して計算を行う。 【情報を落としすぎた場合】 量子コンピュータは特殊な計算を行う。 【情報量とわかりやすさのバランスを取った場合】 量子コンピュータは、複数の計算を同時に行える特殊な性質を持つ粒子を使い、従来のコンピュータよりも高速に計算できる機械です。 最後の「気持ちに配慮して書く」ということも重要なポイントです。 公用文のルールでは、年齢差、性差、地域や国籍の違いによるバイアスを徹底的に避けることが求められています。外に向けて文章を書くなら、差別的な表現で読み手の気持ちを傷つけることは決してあってはいけません。 公用文マニュアルの例示によると、「年配の方でも簡単に申請できます」という表現はNGとされていますが、なぜだかわかりますか? この文章には「高齢者は申請が苦手である」というバイアスがかかっていて、読み手によっては気を悪くするおそれがあるからです。したがって、「手続きに不慣れな人でも簡単に申請できます」といった表現に修正することが望ましいのです。 このような配慮は、昨今ますます重要になっていると感じます。不用意な記載からSNSなどでの炎上を招くと、「そんなつもりはなかった」と釈明しても取り返しがつきません。 どんな文章でも、外に向けて発信するときには、「読み手の気持ちに配慮できているか」を確認しておきましょう。 * * * 後編記事〈じつは「お役所流」で文章のクオリティは確実に上がる…「わかりやすく書く」ための「13のチェックリスト」〉では、引き続き公用文マニュアルをもとに、文章のクオリティを高める「13のチェックリスト」を紹介する。
小林 義崇(フリーランスライター、Y-MARK合同会社代表)