亡き恩師に捧ぐ初挑戦 増田八段が矢倉駆使して斎藤五段降す 第50期棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定二番勝負第1局
藤井聡太棋王への挑戦権を争う第50期棋王戦コナミグループ杯(共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟主催)は挑戦者決定トーナメントが大詰め。12月17日(火)には増田康宏八段―斎藤明日斗五段の挑戦者決定戦二番勝負第1局が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、力戦調の相居飛車戦を抜け出した増田八段が117手で勝利。自身初となるタイトル挑戦を決めています。 ■どちらが勝っても初挑戦 棋王戦は挑戦者決定トーナメントベスト4進出者に敗者復活戦への参加権が与えられるのが特徴。この敗者復活戦を勝ち上がってきた斎藤五段は挑戦に向け2連勝が必須、一方の増田八段は二番勝負の内に1勝を挙げれば挑戦となります。振り駒が行われた本局は先手となった増田八段が3手目にして1筋の端歩を突く工夫を披露。斎藤五段得意の横歩取りを避けて力戦調に持ち込みたい狙いが見て取れ、斎藤五段としては序盤から慎重な指し手を求められる展開になりました。 先に動いたのは増田八段でした。早繰り銀の要領で3筋に銀を繰り出したのは同筋に控える後手玉に着目した、いかにも筋の攻め。この応酬は銀交換に落ち着きますが、攻めの銀と守りの銀の交換に持ち込んだ増田八段が作戦勝ちを収めた印象です。斎藤五段としては自陣一段目に引いた角が働きのない駒になっているのが響きます。 ■作戦勝ちからつかんだ勝利 後手がやむなく角交換を申し込んだ直後、手にした角をすぐ盤上中央に据えたのが増田八段の充実を示す好手でした。好位置から玉頭を睨むこの角打ち、斎藤五段が「全然気づきませんでした」と振り返ったこの一手を境に形勢は徐々に先手優勢に。先手からの玉頭攻めに対し適当な受けがない斎藤五段は無理にでも攻め合いに出るほかありませんが、一転してこの攻め急ぎを叩くのがプロらしい勝ち方です。 盤上右方での押し引きが一段落した局面、5筋に歩を垂らして寄せの起点としたのが増田八段の決め手となりました。この歩を拠点に王手の連続で後手の守り駒をはがす手順が実現しては後手に粘りはありません。終局時刻は19時47分、最後は攻防共に見込みなしを認めた斎藤五段が投了。作戦勝ちをうまく優勢につないだ増田八段の快勝譜となりました。 デビュー11年目にして初のタイトル挑戦を決めた増田八段は「自分の感覚を信じた将棋で勝負をしようかなと」「(直前に他界した将棋道場の恩師・八木下征男さんについて触れ)教えを生かして五番勝負を戦っていきたい」と意気込みを語りました。注目の五番勝負は2025年2月2日(日)に高知県高知市の「文化プラザかるぽーと」で開幕します。 水留啓(将棋情報局)
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