[MOM4926]近大和歌山MF松林優(3年)_周囲の声掛けで持ち直した背番号10…2度目の選手権の舞台での躍動を誓う
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [11.10 選手権和歌山県予選決勝 近大和歌山高 2-1初芝橋本高 紀三井寺公園陸上競技場] 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 「私のハンドから始まった試合でした」 試合後にそう恭しく話したのは、近大和歌山高の10番を背負うMF松林優(3年)。開始早々、初芝橋本高にPKを献上したシーンだ。「先制点を取りに行くことにこだわっていた」(藪真啓監督)だけに、キックオフからわずか3分での失点は、チームとして手痛かった。 ビハインドから入った試合を振り返って、キャプテンのMF佐久間瑛介(3年)は、「序盤はみんな気落ちして、生きている感じがしなかった」と話していた。中でも、松林が攻守ともにチームを牽引してくれると信頼を寄せているからこそ、「優が落ち込んでいる様子だったので、一番声をかけた」という。 自分が幸先の良くないスタートを切るきっかけを作ったとなれば、罪悪感もあるだろう。松林は、「冷静ではあったと思うけれど、正直(気分は)落ちていた」と振り返っている。「(佐久間から)『優、切り替えろ』と言われたけれど、さすがにすぐに切り替えるのは難しかった。(声をかけ続けられたことで)徐々に、もう失うものはないから自分のプレーをしようと思えるようになった」。 そうして、少しずつ持ち直した松林は、持ち味であるテンポの良いドリブルを生かし、相手陣内でチャンスを作るようになる。この日は得点やアシストこそなかったが、近大和歌山の勝ち越しゴールに繋がったCKは、裏へ抜け出した松林がボールを収め、シュートを放ったところから獲得したものだった。 松林は、1年生の頃からAチームで試合に出場し、経験を重ねてきた。2大会前に近大和歌山が全国大会に臨んだ際にも、1年生の中では唯一スタメン入りし、フル出場を果たしている。選手権の舞台は「重圧がすごくて、立っている感じがしない」ことを知っている、数少ないメンバーでもある。 この日は自分のミスをきっかけに苦しい展開になったが、「チームのみんなが支えてくれ、取り返してくれた」。その感謝の気持ちは、全国の舞台をすでに知っているからこそ「自分が先陣を切って戦い、攻撃も守備も引っ張っていく」ことで返したい。 (取材・文 前田カオリ)