民間経済・国民生活の犠牲のもと、軍事経済体制で持ちこたえるウクライナ侵攻2年のロシア経済
制裁逃れでエネルギー輸出を回復
ロシアの2023年の実質GDP(実質国内総生産)が前年比+3.6%になったと、ロシア連邦統計局は発表した。ウクライナ侵攻が始まった2022年の成長率は-1.2%であったが、マイナス成長を1年で克服した。2024年の成長率については、国際通貨基金(IMF)は最新見通しで+2.6%と予想している。昨年10月時点から1.5%ポイント上方修正した。また2025年のIMFの成長率見通しは+1.1%と、成長ペースは鈍化しながらもなおプラス成長が維持される見込みだ。 ロシア経済が持ち直しているのは、戦争継続に伴い軍事関連の需要が経済をけん引しているためだ。そして、先進諸国による制裁措置への対応が進んでいることも背景にある。 国際エネルギー機関(IEA)によると、ロシアの原油、石油製品などエネルギー関連輸出は、2023年に月平均で147.1億ドルとなった。原油価格が高騰した2022年の181.5億ドルからは2割程度減少したが、ウクライナ侵攻前の2021年の146億ドルを上回り、ロシア経済、財政が引き続きエネルギー輸出によって支えられていることを示している。 先進諸国がロシア産原油の輸入を停止し、さらに他国に対しても輸入価格に上限を求める中、世界では所有者が明らかではない「影の船団」と呼ばれる闇のタンカーが増加し、ロシア産原油をインドや中国などに運んでいる。 ベルギーのシンクタンク「ブリューゲル」の分析によると、2021年1月からロシアがウクライナ侵攻を始めた2022年2月までの平均で、ロシア産原油の輸出先では欧州連合(EU)が55%を占めていたが、2023年には8.9%まで低下した。その一方、インドは同期間に1.6%%から35.2%に、中国は11%から22%へと急増した。 ロシアは先進諸国による制裁措置の影響を徐々に乗り越え、エネルギー輸出による収入を回復させている。
進む戦時経済体制化
他方、軍事関連需要の拡大によって、国内経済は持ち直している。ロシアの2023年の政府支出は32.2兆ルーブル(約53兆円)であったが、国防費がその約2割を占めた。国防費は、ウクライナ侵攻前の2022年から約8割も増加した。さらに2024年の国防費は歳出の約3割を占め、ソ連崩壊後最高水準となるGDPの6%に達する。 フィンランド中銀の研究機関BOFITの分析によると、戦争関連の製品の生産量は、2022年2月のウクライナ侵攻前から2023年9月までに約35%増加し、2023年1~9月の製造業の生産量増加分の約6割を占めたという。まさに、戦時経済体制である。 一方で、軍需品の海外からの調達も続いている。英コンサルティング企業「イースタン・アドバイザリー・グループ」によると、精密誘導兵器に利用する半導体は中国や香港、カザフスタンなどから引き続き調達されている輸入元という。