世界中にその名を知らしめた名曲「ラウンドアバウト」を含むイエスの傑作『こわれもの』
OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!』のアーカイブス。今回はイエスの4作目となる『こわれもの』を紹介する。イエスの最高傑作は『危機(原題:Close to the Edge)』(‘72)だと言う人は多いだろう。でも、僕にとってイエスの最高傑作は『こわれもの(原題:Fragile)』(’71)である。中学生の時、本作に収録された「ラウンドアバウト」のシングル盤をリアルタイムで聴いた衝撃は大きかった。キング・クリムゾンの『クリムゾン・キングの宮殿(‘69)』やピンク・フロイドの『原子心母』(’70)はすでに聴いていて、もちろん大きな事件だったけれど、「ラウンドアバウト」のパワーはもっとすごかったのである。シングル「ラウンドアバウト」にハマった人は、誰もが「もっと長く聴いていたい」と思ったはずだ。お金を貯めて『こわれもの』を買い、家に帰って聴いてみると、1曲目の「ラウンドアバウト」はシングル盤の2倍以上の長さ(シングル盤=3分27秒、アルバムバージョン=8分36秒)があり、2度目の感動を得たのだった…。 ※本稿は2019年に掲載
多くのサウンドを盛り込んだ初期のイエス
イエスはクリス・スクワイア(ベース)とジョン・アンダーソン(ヴォーカル)が中心となって、69年に『イエス・ファースト・アルバム(原題:Yes)』でデビューしている。この時のメンバーは上記ふたりの他、ピーター・バンクス(ギター)、ビル・ブルフォード(ドラム)、トニー・ケイ(キーボード)が在籍していた。イエスはアメリカのレーベル『アトランティックレコード』がイギリスのアーティストとして初めて契約したグループである(2番目がレッド・ツェッペリン)。 2ndアルバムの『時間と言葉(原題:Time And A Word)』(‘70)までのイエスは、サイモン&ガーファンクルに似た美しいコーラスワークを売りに(まだ発展途上ではあるものの)、ジャズ寄りのサイケデリックロック(ビートルズの影響はかなり多いが)を聴かせる技術力の高いグループだった。この時期の特徴はピーター・バンクスのジャズっぽいギターワークで、『イエス・ファースト・アルバム』はロックの中で、ギターのオクターブ奏法を使った最初期のアルバムだと思う。2ndアルバムではオーケストラと共演するなど、1stよりも多彩なサウンドを聴かせてはいるのだが、詰め込みすぎというかポイントが絞りきれていなかった。何より、アルバムの核となる決定的な1曲を生み出せていないのが、リスナーに散漫な印象を与えたと思う。