トイレ、更衣室、授乳場所…女性も安心のスペース確保、災害時の避難所レイアウト改善へ 深層リポート
災害時に女性が安心して避難所を使えるよう埼玉県が改善に乗り出す。今年度、女性スペース確保といったレイアウトなどについて具体的な手法を盛り込んだ市町村版マニュアルの策定を全県的に展開する。県は施策に男女間格差が生じてないか点検した上で改善に移す「ジェンダー主流化」を進めており、避難所改善にとどまらず都市公園整備などあらゆる施策で全庁的な取り組みを進めるという。 ■自治体の動き鈍く 避難所は全ての被災者を受け入れる施設だが、女性には不安があったり使いづらかったりするとの指摘がある。東日本大震災などを踏まえた内閣府の「男女共同参画の視点による震災対応状況調査」(平成24年)で詳しく報告された。 一例を挙げると、「生理用品や下着、粉ミルクやおむつなどの備蓄がないか足りなかった」「男女別トイレや、女性の更衣、授乳場所が乏しい」といった声がある。現場で改善しようにも「運営者やスタッフの多くが男性のため要望を出しにくかった」との問題点も指摘された。 内閣府男女共同参画局はこうした課題を認識し、令和2年に「災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~」を策定。災害から受ける影響やニーズは、男女の違いに配慮することなどを要請し、全国の自治体で取り組むべき事項をまとめた。 だが、自治体の動きは遅々として進まない。埼玉県に限れば、こうしたジェンダー視点を取り入れた上で実際に避難訓練や研修を行ったのは全市町村の2割止まり。県担当者は、「各自治体の地域防災計画などに記されてはいても、全体として道半ばだ」と話す。 このため県は市町村支援に向けて標準手引きと映像資料を作成する。女性の更衣室やトイレ、物干し、休養スペースなどについて具体的なレイアウトや運営法などを例示。「参考にしてもらって、市町村版マニュアルの策定を全県的に進めたい」という。 ■公園整備でも展開 県が注力する背景には「ジェンダー主流化」という考え方がある。結果として施策に男女間格差が生じていないかを調べ、改善を図る。避難所の例でいえば、行政側は意図して女性が利用しにくいものにしたわけではないが、実際に使いづらいならその課題解消に真正面から取り組む。