闘将リーチが17年前のサッカー日韓W杯の日本から得た教訓と南ア戦へ備え鳴らす警鐘とは何か?
ここまで極東の戦士たちは、週に1度のペースでやって来るゲームへ計画的な準備を施してきた。週の前半に首脳陣の打ち出すゲームプランをリーダー陣が中心となって理解し木曜もしくは金曜までの非公開練習でブラッシュアップするパターンだ。 その周到なゲームプランには、「自軍の強みの表出」と「相手の弱みの攻略」というふたつの視点が含まれていることは、ボールをキープして、強力な司令塔団にタックルをさせたスコットランド代表戦を振り返れば明らか。南アフリカ代表戦に向けても、その従来のチームルーティーンを崩したくないとリーチは言う。 予選プールBでニュージーランドに次いで2位だった南アフリカ代表は、4年前のイングランド大会で34-32と歴史的勝利を挙げたチームでもある。ただし、現代表で当時の話を持ち出す選手は、ほぼ皆無。現場の脳裏にあるのは、大会直前の9月6日に7-41のスコアで落とした埼玉・熊谷ラグビー場での前哨戦のことだろう。 この試合は、南アフリカ代表の得意とするスクラム、モールへの防御に関しては、手ごたえを感じながらも、空中戦での球の競り合いに苦しんだ。スタンドオフの田村優やインサイドセンターの中村亮土らは、接点で圧力を受けたために、大外にできたスペースを攻略しきれなかったとも反省していた。 そのすべてを踏まえて、リーチはこう展望する。 「(南アフリカ代表戦への)戦術面のことはまったくわからないです。これまでスコットランド代表戦だけを考えて準備してきたので。前回の南アフリカ代表戦では得たものがたくさんあった。(教訓は)『集中しすぎると、周りが見えなくなる』ということです。試合をレビューするとスペースもチャンスもたくさん作れていたけれど、大事なところでミスをしたり前が見られていなかったりしました。いまは(W杯での)4つの試合を通してプレッシャーにも慣れ、注意力も上がってきた。だから次は、(適切な状況判断のもと)もっといい勝負ができる。勝つためにはフィジカル、フィットネスよりも、ゲームの運び方が大事になってくる。相手の勢いをどう止めるか、自分たちの勢いをどう作り出すかも大事になります」 ここでの「ゲームの運び方」と「相手の勢いをどう止めるか」と「自分たちの勢いをどう作り出すか」については、ブラウンアタックコーチが、冷静に南アフリカ代表を分析し具体的な戦術を示すことになる。 南アフリカ代表が、日本代表に圧勝した前哨戦にならい、空中戦を仕掛けてくるかは未知数だが、もし似たようなプランが遂行された場合、同じ轍は踏まない。当時、すぐにけがで交代したウイングの福岡堅樹は、球や相手との距離感を踏まえて、いつでも強い体勢でキックをキャッチできるように心掛ける。本人は、当日もベストコンディションで挑めそうだ。 「コーチ陣とリーダー陣のアライメント(つながり)が大事」とも話すリーチは、過去よりも未来を見据える。本格的なミーティングと練習は15日に始まる。 (文責・向風見也/ラグビーライター)