【ラグビー】表現する場はアートに移った。山本雄貴(元・横浜キヤノンイーグルス)
個展の設営を手伝ってくれた仲間が何人もいた。オープニングレセプションに、何人もの選手たちが参加した。 面白かったのは、作品について、「これが好き」、「ここがいい」と言ってくれる感覚が人によってまちまちなことだ。 「これまで、みんなと美術館に行ったことなどなかったので、一人ひとりのそういう感性については知りませんでした」と笑う。 イーグルス以外の人たちも足を運び、感想を伝えてくれる。作品から勇気をもらえると言ってくれた人がいた。 「絵を見に行った時、自分自身もそう感じる時があります。よかった」 いろんな感想が飛び交う空間を作れた。 それも、個展を開いたからこそ得られた意義のひとつだ。 今季実際にスタジアムに足を運べたのは、まだプレシーズンマッチのブラックラムズ戦だけだ。 新しい選手もいて、新しいチームとして動き出したことが伝わってきた。
引退を決めた直後、「来シーズンは来シーズンで、今年が一番というシーズンを過ごしてくれるはず」と言っていた。 その通りの空気が、そこにはあった。 イーグルスの仲間と会ったり話したりした時、いまでも自分が残したものが受け継がれていると聞くと嬉しくなる。 どんな時も下を向くことなく『勝ち顔』でいよう。 そう呼びかけたことがきっかけで浸透した姿勢は、やがてチームカルチャーとなり、いまもしっかり根付いている。 ブランドリーダーの一人として、自分がやっていたのと同じ様な立場に今季立っているのは先輩の田畑凌(CTB)。在籍中はライザーズの一員として何度も同じグラウンドに立ち、熱くプレーした人だ。 先輩は、今季第5節のブラックラムズ戦(24-8)で活躍し、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた。 「同じように試合に出られない立場だった田畑さんとは、いろんな気持ちを共有してきました。その人が試合に出ているのを見ると、自分がそこに立っているような気になる。テレビ観戦でしたが、あの試合で表彰される姿を見て涙が出ました」 あらためて思った。 「自分も、新しいステージでもっと表現していかないといけないな、と」 これからの人生でも、勝ち顔を忘れることなく生きていこう。 アートを通して、発信し続ける。