年金暮らしの父の末期がん闘病で痛感「知っていれば良かった」予想外にかかった費用とは【一覧表つき:シニアの年金・貯蓄の平均・中央値も確認】
日本人の死因のトップ(※)である「がん」。 その闘病生活には、直接治療に必要となるお金以外にも、さまざまな費用がかかります。病院に支払う費用の中には、健康保険が適用されない項目も。 【シニアの年金・貯蓄一覧表】公的年金や金融資産保有額「平均や中央値」(出所:厚生労働省、金融広報中央委員会) 「父はがんの診断を受けるまでは病気らしい病気をしたことがない人でした。私たち家族も、『病気やケガにかかっても保険が効くから大丈夫』と甘く見ていたところがあったのは確かです……」 と語るのは、年金暮らしの父親のがん闘病を見守った聡子(仮名・48歳)さん。父親のがん闘病生活を振り返り、想定外だった費用について話してくれました。 ※厚生労働省「2022年の人口動態統計(確定数)」(2023年9月公表) ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
年金暮らしの父「前立腺がん・ステージ4」と診断
「年金で暮らす父が、ある日、ステージ4の前立腺がんと診断されました。既に腰骨などに転移しており、手術は難しいということでした。 手の施しようがなくなり、緩和ケアのために住宅型有料老人ホームに入所するまでの3年半、私は母親と二人で介護・看護を行ってきました。そこで特にインパクトが強かった「想定外の費用」があります」 と聡子さんは言います。
【想定外の費用 その1】毎月30万円の病院へのタクシー代
「父は埼玉県さいたま市に住んでいました。都心までは電車で40分、車で1時間程度の距離です。 さいたま市内の病院でがんの疑いがあると診断され、紹介されたのは東京の都心部にある病院。知名度のとても高い病院で、「ここなら治るかもしれない」という強い希望を持って、その病院に3年半通いました」 ガンと診断されてから最初の3年間、父親には日常生活に支障をきたす症状はなかったそうです。また、東京の病院への通院も、月に1回程度。公共交通機関を使い、難なく通院できていたのだそう。 しかし、がん治療に付随する小さな手術をしたのを皮切りに、父親の身体は急激に弱り、抗がん剤治療に耐えることができなくなっていったそうです。 激しい嘔吐や40度近い高熱など、次から次へと症状が出て、月に8~10回ほど、予約外で診てもらうために病院に通うように。 「この時の交通手段はタクシーです。電車の方が安いと分かっていても、とてもではありませんが父の容態は電車に乗れるようなものではありませんでした。 片道1時間、道が混んでいる場合は1時間半程度かかることもあり、タクシー代は片道1万5000円から2万円程度になったそう。月に8~10回通っていたので、タクシー代だけで毎月30万円を超える出費となりました。 致し方ないとは言え、半年間の合計で180万円(月々30万円×6カ月)のタクシー代は、正直かなりの痛手でした」 しかし、聡子さんと母親は、歩くことが難しくなっても「この病院なら治るかもしれない」と希望を持ち続けている父親に、「家の近所の病院に転院しよう」とはなかなか言いだせなかったのだそうです。 「通院時の交通費は確定申告を行うことで医療費控除の対象となりましたが、戻ってきたお金は雀の涙です」と聡子さんは振り返ります。