全国高校サッカー選手権のウラで「高卒と大卒、どちらでプロを目指すか問題」危惧と利点「18歳で即戦力は至難の業。進学はロジカルだが…」
久保も16歳時にはJ1で9試合出場だった
Jリーグ、特にJ1のレベルは非常に高いです。どのぐらいレベルが高いかの理解を深めるために、日本代表のデータを見てみましょう。 カタールW杯(2022)では、日本代表の17名が高卒でプロになった選手でした。彼らのプロサッカー初年度の出場試合数の平均を見てみると、意外にも6.8試合にとどまっています。〈※正式にチームとプロ契約を結んだ年を初年度とカウント。プロ契約をしなくてもJリーグの試合に出場することができる「特別指定」「第2種登録(高校生カテゴリー)」での期間は除く〉 例えば、逸材として知られる久保健英選手ですが、2017年11月に16歳でFC東京でデビューし、2018年に迎えたプロとしての本格的なシーズンでは、リーグ戦9試合出場(FC東京で4試合、期限付き移籍先の横浜F・マリノスで5試合)にとどまっています。フィールドプレーヤーでプロ初年度の試合出場数がいちばん多いのは遠藤航選手の34試合ですが、当時湘南ベルマーレはJ2リーグでした。 また、GKに関しては川島永嗣選手、権田修一選手が高卒プロですが、1年目のリーグ戦出場は0試合です。これはGKというポジションが固定的であり、かつ、年齢が上がってフィジカル要素が落ちても経験値がプレーの質を補完できるという、ポジションの特異性にもよると思います。いかにフィジカルやGKスキルの優れる高卒プロでも、プロ10年級のGKからいきなりポジションを奪うのは至難の業です。 このように、日本代表レベルの資質を持つ選手でも、高卒プロで即戦力となるのは難しい現実があります。
大卒プロとピークパフォーマンスの問題
高卒でプロになることにリスクがある一方で、大卒プロが増えるという傾向は、一部のサッカー関係者が危惧する現象でもあります。 サッカーは、競技レベルが年々高まり、選手の低年齢化が進んでいると言われています。特に欧州5大リーグへの挑戦を視野に入れ、世界のトップレベルの選手として活躍するには、20歳前後で頭角を現す必要があります。カタールW杯(2022)の選手の平均年齢は27.8歳。これをプロサッカー選手のピークパフォーマンス年齢と仮定するならば、大卒選手はプロサッカーの環境に入ってから5年強でピークに達する必要があります。高卒ならば9年強の時間があります。 また、同大会においては大卒プロが9名でフランス大会(1998)以来最多でしたが、残りの17名は高卒プロであるため、エリート選手育成の主流は高卒プロであることに変わりはありません。
「高卒か大卒か」には答えがないからこそ
「高卒プロか大卒プロか?」という問いに絶対的な答えはありません。 個々の状況によって最適な選択があると思います。大事なのは、周りの意見を参考にしつつも、立ち止まって、どういうキャリア設計を目指したいのかを自分の感覚できちんと考えることです。 特に高卒プロを志す場合、ネクストキャリアという視点は必ず考えるべきです。 〈つづく〉
(「高校サッカーPRESS」阿部博一/小野ヒデコ = 文)
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