「自分は怖い存在? 脅威になっている?」悩み抜いた明治大MF熊取谷一星が出した答え「プレーがどんどん整理された」
「じゃあ、自分はどうなのか?」
結果として、このゴールが決勝弾となった。後半は前述した通り、関西学院大の猛攻の前にチーム全体が守勢に回り、熊取谷も71分に交代を告げられた。 「今年は正直、苦しい思いをするほうが多かったので、でもいろんなことを考えながら今日に至った。それを2回戦ですが、上手く表現できたのは自分としてもポジティブに捉えています」 試合後、熊取谷はこう心境を口にした。大活躍を見せた裏側にある苦しい思いというのはどういうことか。 浜松開誠館高校では1年時から主軸としてプレーし、明治大でも1年から出番を掴み、昨年には不可欠な戦力に。今年はU-20日本代表の一員として3月のU-20アジアカップに出場。U-20ワールドカップ出場を決める準々決勝のヨルダン戦で途中出場するなど、大学屈指のアタッカーとして注目の存在だった。 しかし、この時から徐々に自分のプレーに対する疑問を抱くようになっていた。 「本当に自分は相手にとって怖い存在なのか? 脅威になっているのか?」 1学年上の佐藤恵允(ブレーメン)は馬力があり、一人でも相手のディフェンスラインを破壊していくような爆発力があった。同い年の中村も昨年の途中から大ブレイクの時を迎えて、サイドから鋭い突破とずば抜けたシュートセンスを見せ、次々と結果を出し、一早く世界に旅立った佐藤の10番を引き継いだ。 「じゃあ、自分はどうなのか?」 昨年までは猛威をふるっていたサイドからのカットインが、だんだんとイメージ通りに出せなくなっていく。ドリブルをしながら、相手をかわしているようでかわしきれず、結局シュートまで持ち込めない。 今年はインサイドハーフ、トップ下のポジションをこなしたが、中央では思うようにプレーできず、輝けない自分に悩んだ。 「カットインを仕掛けたはずなのに、結局ゴールから離れて行ってしまったり、横断しているだけになってしまったりする。自分の特長が上手く出せないなかで、草太や太田さんがゴールという結果をどんどん出していく。本当に自分の良さを忘れてしまいそうになる時期もありました」 調子を崩した熊取谷は、5月のU-20W杯のメンバー入りを逃し、そこからさらに苦しんだ。 「チームを勝たせるプレーだったり、もう1個勢いのあるプレーだったりが足りない。どうすればいいか、ひたすら考えた」