年始のあいさつメールで良い新年のスタートを
SNSの普及により個人の年賀状のやりとりが減る中、企業でも取引先への送付をやめる動きが広がっています。年賀状の廃止は社内のペーパーレス化を促進し、配達のために車やバイクを使用する必要性をなくすことに。企業のSDGsに対する意識が高まり、CO2の排出量削減に向けた取り組みの一つにもなっているようです。また、コロナ禍でテレワークが浸透し、オフィスに送る意味合いが薄れていることも、年賀状廃止の動きを加速している要因と考えられます。 【調査】省略したら不快に思われるメールのビジネスマナーは? 新しい年を迎えるに当たり、年賀状がなくなっても何らかのあいさつをしておきたい。そう考える人は少なくないでしょう。最近では、年賀状の代わりにメールであいさつをする人も増えていると聞きます。はがきからメールへとツールが変化する中で、変わらないこともあれば、メールならではの特性を生かせることもあるはず。良い新年のスタートを切るためにも、ツールの特性やメールで年始のあいさつをするときのポイントをしっかりと押さえておきましょう。 ■虚礼廃止は年賀状に限らない SDGsへの貢献や労働環境の変化を理由に年賀状を廃止する企業が増えていますが、その裏に虚礼廃止の側面があることを忘れてはいけません。虚礼廃止とはうわべだけの礼儀、つまり中身が伴わない形だけの儀式はやめようという動きです。あらかじめあいさつ文やイラストが印刷されたはがきに、宛名だけが印字されて届く。こうしたものが量産されれば、形だけの儀式と思われても仕方がないですよね。 年賀状に限らず、メールでももちろん同様です。決められたテンプレートを使用し、データベースにあるアドレスに一斉送信。こんな形だけのメールには何の意味もありません。どうせ皆に送っているメールだと思われれば、相手に気持ちが伝わることもないでしょう。手を抜きすぎだと感じられれば、かえって自分の評価を下げてしまうことも。相手の受信トレイには、業務に関するさまざまなメールが届いています。ただ相手の時間を奪うだけの意味のないメールを送ることはやめましょう。 ■年賀状とは違うメールならではの特性 年賀状からメールにツールが変化しても変わらないこともあれば、ツールの変化によりコミュニケーションに変化をもたらすこともあります。形だけではない心を込めた年賀状は、相手の心にも響き、深く印象に残るものです。一方メールは、はがきよりも手軽なコミュニケーションツール。届いたメールにその場ですぐに返信ができるメリットがあります。印象に残るというよりは、双方向のコミュニケーションに発展しやすいツール。うわべだけではない中身のあるメールを送り、互いのやりとりが活発になれば、より相手との関係性は深まるかもしれません。 言葉の使い方にも違いがあります。年賀状では、新年を祝う言葉として「謹賀新年」や「恭賀新年」などが使われることがほとんど。これをそのままメールに記載すると違和感が生まれます。メールは、手紙よりも対面や電話に近いツールと考えてください。「あけましておめでとうございます」のように、実際、相手に対面した際に交わすだろう言葉を使用したほうが自然な印象です。 ■一対一だからこそ通じる思いを ビジネスのコミュニケーションは、形だけにとらわれず意味のあるものにすべき。メールで年始のあいさつをするならば、ありきたりの言葉ではなく、自分の気持ちを自分の言葉でしっかりと伝えることが大切です。相手と自分の一対一だからこそ通じる思いを、感謝を込めて丁寧に書きましょう。 年始のあいさつメールで伝えたい内容は、主に以下の二つです。 昨年のお礼 今年の抱負 前年の印象に残っている出来事があれば、その時、感じたことに触れるのも良いでしょう。新年に控えているプロジェクトがあるならば、その意気込みを伝えるのも一つです。そこに具体的なエピソードがあればこそ、相手はそれが自分に向けられたメッセージだと実感できます。これは年賀状でも同じことが言えますよね。形式的なかしこまった文章よりも、よほど相手の心に響くはず。はがきと違って書くスペースに制限のないメールならば、より思いを表現しやすいのではないでしょうか。 年賀状からメールに手段が変わっても、コミュニケーションの本質は一緒です。伝えたい気持ちは、自分の言葉で具体的に書くことが求められます。年末に一年を振り返る機会があるならば、結果や成果だけではなく、相手と過ごした時間、交わしたやりとりにも思いをはせてみてはいかがでしょうか。 ■ 井上賢治 一般社団法人日本ビジネスメール協会認定講師。 1974年生まれ。宮城県出身。大学卒業後、大手製紙メーカーグループの印刷会社に勤務。入社3年目で営業成績1位を獲得。翌年にはその経験を生かし、印刷の新会社立ち上げに参画。新規開拓において数多くの実績を残し、出版物の制作や大手企業のセールスプロモーションを手がける。その後、移籍した会社では東京支社長、営業本部長を歴任。30名の部下を統括するかたわら、ウェブサイトを活用した印刷サービスの運営を行う。テレアポや飛び込み訪問による営業スタイルを確立していたが、さらなる受注拡大の実現、そして組織全体の営業力強化、人材育成など、幅広い業務を担うなかでビジネスメールの有用性を実感。1通のメールがコミュニケーションを円滑にし、業績向上にも結びつくとの想いから、認定講師としての活動を開始。営業経験、管理職経験を生かした実践的なビジネスメールの指導を得意とする。 ■ 日本ビジネスメール協会 日本で唯一のビジネスメール教育専門の団体。ビジネスメールに特化した講演・研修などの事業を10年以上前から行っており、メールに関する書籍を中心に35冊出版(内3冊は翻訳され台湾で出版)。メディアには1,500回以上登場し、ビジネスメールについて情報発信している。仕事におけるメールの利用状況と実態を調査した「ビジネスメール実態調査」を2007年から毎年行い、日本で唯一のビジネスメールに関する継続した調査として各メディアで紹介されている。ビジネスメールやビジネス文章、ビジネスマナーなどの集合研修(講師派遣)や講演(公開講座)を会場とオンラインで実施中。 日本ビジネスメール協会サイト
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