「頭」で稼いで、「口」でさらに稼ぐ…AI市場率いるCEOたち(1)
「騒がしい技術経営者」全盛時代だ。人工知能(AI)の急発展と国際供給網の急変で一寸先も見通しにくい中で、長期的ビジョンを追求しながらも活発な外部疎通で市場を説得する技術企業経営者が注目されている。 今年はエヌビディアのグラフィック処理装置(GPU)発売25周年、AMDのリサ・スー最高経営責任者(CEO)就任10周年、フェイスブック(現メタ)創業20周年だ。3社とも、「積極的な外向型リーダー」を中心にAI時代に新たな全盛期を迎えている。 ◇エヌビディアGPU、10年以上先に投資 11日はエヌビディアがグラフィックカード「GeForce256」を発売してから25年になる日だった。エヌビディアは自社ブログに「1999年に発売された世界初のGPUのGeForce256はゲームだけでなくAI市場を変えた。2011年にグーグル、スタンフォード大学、ニューヨーク大学の研究員がディープラーニング演算を処理できるエヌビディアGPUの能力を発見した」と説明した。 演算能力の限界で長く技術進展がなかった「AIの冬」を終わらせたのは2012年のディープラーニング大会でのトロント大学ジェフリー・ヒントン教授チームの優勝だった。彼らは13万回以上引用された記念碑的論文「畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を利用したイメージネット分類」抄録に「GPUでとても効率的な演算を実現した」と書いた。ヒントン教授は今年ノーベル物理学賞を受賞し、当時研究チーム員だったイリヤ・サツキーバー氏はオープンAI共同創業を経て今年また別のAIスタートアップを創業した。 エヌビディアはその後10年以上AI用GPUと専用ソフトウエア開発に専念した。ジェンスン・フアンCEOは6月にカリフォルニア工科大学での卒業演説でこれを「0億ドル市場」と表現したが、まだお金にならない未開拓分野に投資したという話だ。フアンCEOは「われわれは顧客が確実でない分野に何かを作ることに決めたが、顧客がいない所には競争者もいないため」と話した。 ◇CEOの活躍で株価7倍、時価総額130倍 2004年に設立され今年20周年を迎えたメタはソーシャル広告(フェイスブック)企業からAI企業に変貌した。フェイスブックは世界最大のソーシャルメディアだったが、モバイル運営体制を掌握したアップルとグーグルの個人情報・手数料政策により売り上げが揺れ動いた。 しかし同社が2013年から運営した人工知能研究所(FAIR)が地道に成果を出し始め、昨年大規模言語モデル(LLM)のラマをオープンソースで公開してメタは「AI企業」への転換に成功した。2022年末に90ドルまで下がった株価は現在600ドルを見据えている。おかげでザッカーバーグ氏の財産も増え世界2位の富豪になった。