スマート#3 詳細データテスト クラス水準以上の動力性能 優れた基本設計 物足りない細部の仕上げ
はじめに
2023年にコンパクトSUVの#1を発表し、より実用的なテイストを得た新生スマートだが、次なる一手はスタイリッシュさを多少増した。 【写真】写真で見るスマート#3とライバル (16枚) 新型EVの#3は、とにかくエキサイティングだという触れ込みだ。エキサイティングかどうかはともかく、#1より明らかに低く曲線的で、違う土俵で戦おうとしている。 再出発したスマートとしては第2の市販モデルで、メルセデスとジーリーの合弁としてどのようなブランドの定義をしようとしているのかも教えてくれる。スマートはSUVクーペと呼ぶが、#1と関連性の強いモデルながらSUVっぽさは薄い。むしろプレミアムな電動ハッチバック的で、テスラ・モデル3やボルボEX30、クプラ・ボーンあたりと競合しそうだ。 プラットフォームは、つい先日テストしたばかりのボルボEX30と共通で、当然ながらレイアウトも同様。リアモーターの後輪駆動と、前後モーターの4WDが設定される。バッテリーはリチウムで、安価な仕様がリン酸鉄、航続距離が長い仕様はニッケル・マンガン・コバルト。テスト車は、シングルモーターのロングレンジである上位グレードのプレミアムだ。
意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆
外観に#1との共通点は多いが、ルーフラインを傾けた以上の差もある。生産も#1と同じ中国の西安工場製だが、よりワイドで、全長もホイールベースも長く、着座位置はわずかに低い。 ルーフは80mm低く、これは地上高とフロアパンの厚さ、シートの高さ、ルーフ高をそれぞれ20mm下げた結果だという。ほかのプレミアムブランドは、シンプルにルーフ形状を変えるだけで、目立った効果を得られないのとは違う。#1との差別化は明確で、プロポーションもよく、洗練度も高い。 ただし、個性や物欲を刺激する要素、デザインで選ぶユーザーの関心を得るパワーは弱め。デザインはインパクトより洗練性を重視しており、受け入れやすいがあまり印象深くはない。大胆さや斬新さにも欠ける。スマートの自動車メーカーとしての出発点を考えれば、これは明らかな失敗に思える。 4.4mの全長は、フォルクスワーゲンID3やクプラ・ボーン、シトロエンe-C4よりわずかに長い。全高も多少上回る。2785mmのホイールベースは、コンパクトEVとしては長め。ボルボEX30より130mm長く、キャビンの広さを期待できるが、ハンドリングの俊敏さでは後れをとるかもしれない。 バッテリーや、モーター配置と駆動輪には選択肢がある。コストパフォーマンスで目を引くのは、エントリーグレードのプロだ。272psの後輪駆動で、0-100km/hは6秒を切り、価格は3万3000ポンド(約657万円)。バッテリーは47kWhのリン酸鉄で、航続距離は320kmを超える。 その上には4モデルを用意するが、いずれも62kWhのニッケル・マンガン・コバルトバッテリーを搭載。急速充電性能は150kWで、リン酸鉄の130kWを凌ぐ。基本はモーターリア置き後輪駆動だが、トップグレードのブラバスは前後合計で429psの4WDとなり、高性能ブレーキやハードなサスペンション、専用設定のトラクション/スタビリティコントロールを採用する。 サスペンションは四輪独立で、スティールのコイルスプリングと一般的なパッシブダンパーを装備。テスト車の車両重量は実測で1832kgと、コンパクトEVとしては重めの部類だが、直接的な競合モデルのほとんどより大きくてパワフルなことを考えれば許容できるだろう。