「秋の七草は全部見えるわよ」 秋雨の境内を彩る花々 - 音羽山観音寺後藤住職の花だより
奈良県桜井市にある尼寺「音羽山観音寺」。10月初旬のこの日は、前日までの秋晴れとは打って変わり、秋雨の降り続く一日になりました。花が好きな後藤密榮住職の庭には秋の花がかわいらしく咲いていました。 [写真]ピンク色の住職の庭
「今はピンクの花が多いわね」 雨の降り続く中、住職の庭が見渡せる無量庵の縁から見ても、ピンク色の花が目を引きます。 「フジバカマとハギね」 名前は知っているものの、もう少し渋い色のイメージがありましたが、どちらもかわいい色をしています。 「アサギマダラもそろそろ来るころだけど。今年はまだ見ないわね」 アサギマダラはフジバカマによくやってくるチョウとのこと。 「あんまり暑かったから羽化しないのかもね」 フジバカマも今年はつぼみの時期が長く、花が咲くのは遅かったようです。今年の夏の暑さは観音寺の動植物にも影響しているんですね。 フジバカマは境内のあちらこちらに咲いています。小さい花が集まって咲き、華やかさの中にも清楚を感じられ、雨の境内を彩っていました。 「もともと鉢植えのフジバカマを置いていたんだけどね。下からいっぱい出てきちゃって」 住職の庭にはよくあることのようですが、鉢植えの花から種が飛び出して、ほかの場所から芽を出して花を咲かせています。フジバカマもそうして境内のあちらこちらに増えたようですね。
「シソも一回種をまいただけで、毎年どこからか出てくるのよ」 青ジソと赤ジソがあるそうですが、不思議なことに、毎年場所を変えて境内のどこかに生えるそう。住職も楽しみなようです。 「ここから秋の七草は全部見えるわよ」 ハギ、オバナ(ススキ)、キキョウ、ナデシコ、オミナエシ、クズ、フジバカマ。オミナエシとナデシコは7月ごろに咲いて終わってしまったとのこと。キキョウは7月から咲いており、10月初旬のこの日もまだ花を咲かせています。9月初旬に穂を出し始めたススキは綿をつけ始め、クズは裏山の木に巻き付いているとのこと。 「菊は少ないのよね」と住職。 庭の一角に、ひょろりと長く伸びた菊が花を咲かせ始めていました。 「春先に一度切ってあげると短くきれいに咲くと聞いたんだけど、切ってつぼみが出ないと嫌だからそのまま伸び放題よ。ぐねぐね曲がっても、好きなとこに行って花を咲かせてねって」
何だか、子育てにも参考にしたくなる言葉に感じました。 音羽山観音寺 山の中にある尼寺。桜井市南音羽。 JR・近鉄桜井駅下車、桜井市コミュニティバス談山神社行、下居下車、約2km。 火曜日閉門。17日の御縁日が火曜日の時は開門、翌日閉門