「等身大の自分を評価してくれる大人の存在があったから続けられた」歌手志望、スカウトで芸人に…導き成長見守る野崎亮介と「はっぴちゃん。」
松竹芸能のホーム劇場「心斎橋角座」(大阪市中央区)。11月半ばの夜、売り出し中の若手芸人が出演するお笑いライブで、ピンク色のはっぴを羽織った女性ピン芸人「はっぴちゃん。」(19)が、舞台狭しと歌って踊っていた。 【写真】舞台上でリズムネタを披露するはっぴちゃん。
首から下げた小太鼓をドンドンたたきながら登場し、音楽に合わせて「しゃべってないのに、だまれと言われる」「でも、めでたい、めでたいこ~」と声を張る。底抜けに明るいリズムネタで、客席を沸かせた。
同社大阪マネジメント本部部長の野崎亮介(50)は「彼女が出てくるだけで、がらっと舞台の雰囲気が変わる」と笑う。5年前、はっぴちゃん。をお笑いの道に引っ張った張本人だ。
2019年、松竹グループ主催のオーディション「松竹ジャパングランプリ」のスタッフだった野崎は、声が大きく、ぐいぐい前に出たがる中学生に目を奪われた。歌手志望だといい、当時はまだ本名。求められてもいないのに、勝手に顔芸までしてみせた。
野崎はこれまで、お笑いトリオ「安田大サーカス」や小学生兄弟コンビ「まえだまえだ」など数多くの芸人を世に送り出してきた。声をかけるかどうかの判断は、あくまで直感。「まだ芸人としての型が何もない、素人との出会いが楽しい」。この時もピンときた。
オーディションで審査員特別賞を受賞。後日、打ち合わせにやってきた母娘に、野崎は単刀直入に伝えた。
「一通り見させてもらいましたけど、これは芸人ですわ」。大笑いする母親の横で、本人は戸惑った。
「だまされたと思って」チャレンジすることにしたものの、事務所の養成所で洗礼を浴びた。入学当時は14歳。本格的なネタを作ったことなど一度もない。わからないなりに作って披露すると、先輩芸人から「子どもやから笑ってもらえてんねん」と見下された。悔しさから授業中に泣いてしまったこともある。
そんなとき、講師も務める野崎は「この年齢でネタをやりきる力は見習えよ」とその場でさりげなくフォローした。はっぴちゃん。は「しんどい時期もあったけど、等身大の自分を見て評価してくれる大人の存在があったから、続けられた」と振り返る。