遺産相続手続き、いつまでに何をすべきか?「9つの手続き」のポイントを税理士が解説
5年10ヵ月以内…相続税の還付請求
相続税を納めたあとで、税額の計算に誤りがあって相続税を納め過ぎたことがわかった場合は、申告をやり直して税金を取り戻すことができます。この手続きを更正の請求といいます。更正の請求ができる期限は、相続税の申告期限から5年以内、つまり、相続の発生から5年10ヵ月以内となります。 ただし、次のような場合は、これらの事由の発生から4ヵ月以内であれば更正の請求ができます。このようなときは、場合によっては遺産分割協議からやり直す必要があるため、速やかな対応が求められます。 ・申告の時点で未分割であった遺産が分割された場合 ・申告期限から3年以内に未分割の遺産が分割されたことで軽減措置や特例が適用できるようになった場合 ・子の認知、相続人の廃除などで相続人が異動した場合 ・遺留分侵害額の請求を受けて相続財産から支払った場合 ・遺贈をする旨の遺言書が見つかった場合または遺贈が放棄された場合
【期限が特にない遺産相続手続き】
最後に、期限が特にない遺産相続手続きをご紹介します。期限がないために先送りしがちですが、必要であれば早めに手続きすることをおすすめします。 遺産分割協議 遺言がない場合や、遺言とは異なる遺産分割をしたい場合は、相続人どうしで遺産分割について話し合う必要があります。この話し合いを「遺産分割協議」といいます。 遺産分割協議は相続人全員で行わなければなりません。一部の相続人で話をまとめた場合や、遺産分割協議を終えたあとで新たな相続人(隠し子など)の存在が明らかになったような場合は、遺産分割協議をやり直す必要があります。 遺産分割協議そのものには期限はありません。しかし、相続の発生から数えて、相続放棄の期限は3ヵ月後、相続税の申告と納付の期限は10ヵ月後であり、これらの期限を念頭に早めに取りかかることをおすすめします。 遺産分割協議の結果は、遺産分割協議書という書面に残します。遺産分割協議書は、話し合いの記録を残すという目的のほか、話し合いの内容を証明する目的もあります。遺産分割協議を行ったのであれば、相続税の納税、預金や不動産の名義変更の手続きで遺産分割協議書の提出が求められます。 遺産分割協議書には、相続手続きの対象となる不動産や銀行口座などを特定するため、資産の内容を詳細に記載します。また、相続人全員が同意していることを証明するために、相続人全員が自筆で署名し、実印を押印します。 預貯金等の解約・名義変更 亡くなった人の預金は、金融機関が預金者の死亡を把握した時点で凍結されます。これは、相続人のうちの誰かが勝手に預金を引き出してトラブルになることを防ぐためです。 預金口座が凍結されると、預金が引き出せなくなるうえ、自動引落もできなくなります。 預金口座の凍結を解除するためには、原則として預貯金の名義変更手続きをしなければなりません。預貯金の名義変更手続きに期限はありませんが、預金を相続する人が決まり次第、できるだけ早く手続きをしましょう。 預貯金の名義変更手続きに必要な書類は次のとおりです。遺言書がある場合とない場合で必要な書類は異なります。 遺言書がある場合 ・遺言書 ・検認調書または検認済証明書(検認が必要な遺言書の場合) ・亡くなった人の死亡の記載のある戸籍謄本(または出生から死亡までの戸籍謄本) ・預金の相続人と遺言執行者の印鑑証明書 ・遺言執行者の選任審判書謄本(遺言に遺言執行者の定めがなく裁判所で遺言執行者を定めた場合) 遺言書がない場合 ・遺産分割協議書(遺産分割協議をした場合) ・相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議をした場合) ・亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本 ・相続人全員の戸籍謄本 株式など有価証券の相続手続き 亡くなった人が証券会社の口座を通じて株式など有価証券の取引をしていた場合は、上記の預貯金の名義変更手続きと同様の手続きが必要です。具体的な手続きの流れや必要書類は、取引している証券会社に確認してください。取引所に上場していない株式がある場合は、株式の発行会社に連絡します。
税理士法人チェスター