家族と離れ「めちゃくちゃ迷惑かけている」 単身で欧州→鳥取…元日本代表“パパの背中”【インタビュー】
単身で鳥取でプレーしてきた元日本代表MF長谷川にとって家族の存在とは
サッカー選手には、移籍によって家族と離れ離れになってしまう状況も多くある。ガイナーレ鳥取の元日本代表MF長谷川アーリアジャスールも、その渦中にいた1人。11月7日には、今シーズン限りでの現役引退も発表された。常に味方となって寄り添ってくれる家族の存在について、「本当に感謝しかない」と赤裸々に語ってくれている。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也) 【写真】長谷川を支える家族…愛息から送られた父の日プレゼント ◇ ◇ ◇ これまで9つの国内外クラブでプレーしてきた長谷川。セレッソ大阪時代の2015年に結婚し、その年の夏にスペイン1部レアル・サラゴサへの移籍を決断する。単身赴任で欧州へ渡り、当時長男を妊娠中だった妻と離れて生活することになった。1人でスペインへ向かった決断に「後悔はない」と言うが、家族からはどんな反応だったのか。 「家族は常に僕の選択を尊重してくれているので、本当に感謝しかないですね」 サッカー選手として挑戦する限り、応援し続けてもらった。「妻のお父様とお母様にはめちゃくちゃ迷惑をかけていると思います。今も鳥取に単身で来ていますけど、子どもが3人いて手伝ってもらっている状況。そこに僕は頭が上がらないですね」。家族の協力があってこそ今の自分自身が成り立っている部分も自覚している。 スペインでは半年間で契約解除となる異例の事態に巻き込まれ、その後は約2か月のフリー期間を経て湘南ベルマーレへ。大宮アルディージャ、名古屋グランパス、FC町田ゼルビアとその後もクラブを渡り歩いたが、鳥取に2023年4月に加入する前も、オファーが届かず半年間フリーとなる時間があった。 「あのタイミングでお話をいただいたガイナーレ鳥取にはすごく感謝しています。改めてサッカーができる喜びを感じることができました。チャンスをもらえたことは僕自身嬉しかったですし、それと同時にもう一回見せてやろうという気持ちにもなりましたね」 今季で鳥取に移籍して2年目。家族と会える時間は限られているが、「家族を養わなきゃいけないですし、家族を大事にしなくちゃいけない。大黒柱として好きなサッカーで職業をやらせてもらっていますけど、子どもたち、妻の生活もしっかり考えなくちゃいけないと思っています」と36歳となった今、父親としての責任感もより大きくなっている。 「やっぱり、いつまでもかっこいいパパでいたい」 力のこもった言葉を吐露する長谷川。引退発表の約2週間前……「『かっこいいとは何か』と考えた時に、やはりサッカー1つのことを頑張っている姿、何かに一生懸命になって僕自身が楽しんでいる姿というのは間違いなく影響はあると思います」とサッカー愛を胸に、家族への“恩返し”を誓っていた。 「子どもたちには、背中で見せていきたい。引退、また次のキャリアに進んだとしても、やっぱりパパかっこいいよねと思ってもらえるためにも、今どういうふうに動くとかどういう行動をするべきか。ピッチ内外でどう動けるかという点は、ガイナーレに来てからけっこう考えるようになりました」 36歳が紡ぐサッカーストーリー。2024年でその物語は幕を閉じる。鳥取の地で家族、そしてクラブへの恩返しの思いを胸に懸命にボールを蹴り続けてきた。今年でサッカー選手から退いてしまうが、子どもたちに「かっこいいパパの姿」を見せるためにも、長谷川は次のステージへと目標を定めていく。 [プロフィール] 長谷川アーリアジャスール(はせがわ・あーりあ・じゃすーる)/1988年10月29日生まれ、埼玉県出身。横浜FMユース―横浜FM―FC東京―C大阪―レアル・サラゴサ(スペイン)―湘南―大宮―名古屋―町田―鳥取。元日本代表。J1通算251試合17得点、J2通算97試合14得点、J3通算33試合3得点。持ち前のパスとドリブルを駆使しチャンスを演出する。22年シーズンで町田を契約満了となりフリーとなっていたなか、23年4月に鳥取に加入。翌年8月からは副キャプテンに就任し、チームを支えていた。24年11月に今季限りでの現役引退を発表している。
FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也 / Kenya Kaneko