近畿で唯一甲子園優勝ゼロ 近江、滋賀勢の悲願なるか センバツ
第94回選抜高校野球大会で、初の決勝進出を果たした近江(滋賀)は、新型コロナウイルスのPCR検査で関係者に陽性判定が出た京都国際の参加辞退により、近畿地区補欠1位校から繰り上げで急きょ出場した。センバツ補欠校から出場したチームの決勝進出は初めてだが、近畿勢で唯一、甲子園で優勝したことがないのが滋賀だ。近江は春夏の決勝で8戦全勝の大阪桐蔭を相手に、悲願を達成できるか。 【全試合あります! 球児の熱い戦いを号外で】 春夏の甲子園で優勝したことがないのは滋賀に加えて、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、新潟、富山、石川、山梨、鳥取、島根、宮崎の計14県。優勝空白地域は東北や北信越が多い。 なぜ滋賀勢がこれまで優勝できなかったのか。近畿には大阪桐蔭、智弁和歌山など全国制覇を狙えるチームが多く、地元の有望選手が県外に流出してしまうケースが多い。例えば、決勝で戦う大阪桐蔭の主戦投手は滋賀出身の前田悠伍(2年)だ。 滋賀の甲子園出場回数トップは近江で春夏計21回。北大津で春夏計6回出場し、現在は私立の彦根総合の監督を務める宮崎裕也さんは「近江の力が頭一つ抜けていたので、予選で一つ、二つミスをしても以前は勝ち上がっていけた」と指摘する。かつてはライバル校が少なく、滋賀大会で厳しい戦いを経験しないため、予選を勝ち抜いても甲子園では強豪校相手に成績が振るわなかったという分析だ。 ただ、近年の滋賀勢は、近江が2021年夏の甲子園で4強入りし、18年夏もベスト8進出。16年春は滋賀学園が8強入りを果たすなど着実に存在感を示してきた。 06年に県立高校普通科で学区制度が撤廃され、文武両道を目指す公立校に追い風が吹き、09~18年にかけて彦根東が計4度、甲子園に出場した。18年センバツでは21世紀枠で膳所も選出された。公立校のレベルが上がり、私学を脅かす存在になってきた。近江は昨秋も近畿大会こそ8強入りしたが、滋賀大会では3位。優勝は公立の八幡商だった。エース右腕の山田陽翔(はると、3年)が右肘痛で登板しなかったことも影響したが、戦力がダウンすれば、一気に公立校に足をすくわれかねないのが、今の滋賀の情勢だ。 滋賀勢の甲子園最高成績は近江で01年夏の準優勝。センバツでは過去5回、8強に入ったが、今回は近江が壁を突破して初の4強入りを果たすと、一気に決勝まで進んだ。多賀章仁監督は「昨年夏も4強に入ってチームに流れが来ている。選手層が上がっているのは確かだ」と手応えを感じている。 宮崎さんは「ずっと近畿で優勝できていないのは滋賀だけと言われ続けてきた。近江には優勝してほしい」とエールを送る。近江のスクールカラーは琵琶湖の青。滋賀勢の夢に向かって、近江ブルー旋風で突き進んでいく。【藤田健志】 ◇決勝戦もライブ中継 公式サイト「センバツLIVE!」(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2022)では、決勝もライブ中継します。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/hsb_spring/)でも展開します。