ゲレンデに押し寄せるキャッシュレス決済の波
キャッシュレス決済の機会がとても多くなっている。 だからといって現金を持ち歩かなくてもいいというほどにはなっていないのだが、日常の生活ではサイフを取り出すことはほぼなくて、携帯しているスマホのタッチやQRコードを使って代金を支払えることがほとんどだ。 ■タッチ決済が「ゲレ食」でも使えるように 冬のシーズン中、数回は冬山にでかけてスキーなどを楽しんでいるのだが、そのゲレンデにもキャッシュレスの波が訪れている。 確かにクレジットカードを使えるようになるのにはかなりの歳月がかかったし、SuicaやPASMOなどのFeliCa系、いわゆるおサイフケータイ系のタッチ決済ができるようになるにもそれなりの時間が必要だった。 でも、そのうち、ゲレ食みたいな庶民的な食堂でもタッチ決済ができるようになり、今は、クレジットカードのタッチ、FeliCaのタッチが、プラスティックカードでも、スマホに登録した各種のカードでもできるようになっていて、ちょっと驚いたりもしている。 ウィンターリゾートは、日本の雪質のよさを評価してくれてる外国人がものすごく増えていて、場所によっては、外国人の方が多いくらいだ。そんななかで、ニーズが高まったということもあったのだろう。いったん使えるようになってから、いたるところに浸透するのに、それほど時間はかからなかった。 ■交通系ICカードが使えなくなる謎 ここのところのキャッシュレスにはちょっとした懸念もある。今年(2024年)の初め頃から街中の自動販売機や小規模な店舗などで、いきなり交通系のICカードが使えなくなっているのに気がつかなかったろうか。 INSネットの「通話モード」は引き続き利用できるのだが、「ディジタル通信モード」については、2024年1月から地域ごとに段階的にサービスが停止した。 日本のインターネット普及にはずいぶん貢献したINSネットの通信だが、ついに別れのときがきたわけだ。 その補完策は2027年頃から提供されることになっているが、完全に代替するものではない。INSネットはNTT東日本・NTT西日本が提供するISDN回線であり、通話モードやディジタル通信モード等での通信が可能で、手軽に低容量のデータ通信に使えることもあって、重宝されていた。それがサービス終了となって、その代替策を調達できない現場が、各種サービスを提供できなくなっているわけだ。 それはすなわち、このあいだまでタッチで購入できたジュースが、今は現金でしか購入できないということになるわけで、人によっては不便を感じているに違いない。 ■スマホで買ったリフト券が紙のカードになる場合も 最近、訪れたスキー場では、去年とはまた異なる新たなシステムでリフト券を購入するようになっていた。いろんなところで試行錯誤が続いている。 スキー場のような場所では、ふところをゴソゴソしてサイフを取り出して、といったことはやりたくない。悪天候のときなどはなおさらだ。でも、携帯しているスマホでリフト券を購入し、そのまま乗れればスマートだ。 事前に購入しておいて、それをリフト券売り場で見せれば、ICカードと引き替えてくれるというパターンも多い。たいていはQRコードがメールなどで送られてくるのだが、今回のスキー場では、窓口でスマホを渡し、係の人が暗証番号を入れると購入手続きが完了し、紙のICカードが発行されるという仕組みになっていた。 紙のカードとの引換になるのがちょっとスマートさに欠けるが、リフト券リーダーとスキーヤーの身体に身につけたスマホの距離を解決できるような代替手段はまだちょっと見当たらなさそうだ。そのあたりも含めて、これからどんどん変わっていくのだろう。そのうち現金ではリフト券が買えなくなる時代がやってきそうではある。 ■ 著者 : 山田祥平 やまだしょうへい パソコン黎明期からフリーランスライターとしてスマートライフ関連の記事を各紙誌に寄稿。ハードウェア、ソフトウェア、インターネット、クラウドサービスからモバイル、オーディオ、ガジェットにいたるまで、スマートな暮らしを提案しつつ、新しい当たり前を追求し続けている。インプレス刊の「できるインターネット」、「できるOutlook」などの著者。
山田祥平