セ・リーグ優勝を果たした阿部監督を祝福した原前監督

　巨人軍前監督で、オーナー付特別顧問の原辰徳氏（６６）が２日、スポーツ報知に特別寄稿した。球団では自身以来となる新人監督としてのリーグ優勝を成し遂げた阿部慎之助監督（４５）の１年目の手腕をたたえ、今後の短期決戦へ向けて「チャレンジャーとして臨め」とエールを送った。 【ハイライト動画】シーズン最終戦を白星締め！ 　＊　＊　＊　＊ 　阿部慎之助監督、改めてペナントレース優勝おめでとう。前監督としてこれ以上の喜びはない。勝負の世界は、理想や過程を求めることも大切だが、何より結果を残すことがとても重要になる。決して「結果が全てだ」とは言いたくはないけど、まだ実績などがない人にとっては、結果が何よりの説得力になる。今回、ジャイアンツの若き世代のリーダーが、本当の意味でスタートを切ったという種類の喜びがこみ上げてくる。 　慎之助…ここからはあえてこう呼ばせてもらうことを容赦願いたい、その慎之助からも優勝の報告を受けた。今年の経験を生かし、これからも新しい時代を築き上げてほしい。喜びも大きいし、苦しさも大きかったはず。まだまだ発展途上だよ。そう伝えると「いろいろなことを感じました。まだまだですので、精進してまいります」と言ってくれた。この優勝にあぐらをかかず、まだまだ慎之助は大きくなる。立派な指導者への道を進んでほしい。今はお行儀よく、というよりもどこかに荒々しく、でいい。私もどちらかと言うと、そういうふうなタイプから少しずつ丸くなっていったかな（笑い）。 　今年はあえてグラウンドに足を運ぶことを控え、「静観」という形を取らせてもらった。行って、見たりすりゃ、何か一言、二言と言いたくなってしまうもの。それは必要ない。「監督の気持ち」は自分の中では分かっているつもりだ。 　それは、慎之助への信頼でもある。私も昨季までヘッドコーチとしてそばにいさせて、変なことは教えていないという自負も持っている。慎之助が今年、「あぁ、あの時言われていたことは、このことだったんだな」と思い出すことが一つでもあれば、この上ないことだよ。 　思い切った選手起用も見事だった。ベテランへの配慮、将来を考えた采配。時に厳しく、時に兄貴分でありと、非常に考えてやっていた。何と言っても現役時代にはとてつもないレコードを持っている男だ。そこはもう監督になっても自信満々でやってほしいという思いが私にはあり、そのようにやってくれた。 　選手で言えば、（岡本）和真をたたえたい。期待もしているから厳しい目で見ていた。４番に座り、なかなか結果が出ない時期もあった。本人にすれば一年間、苦しい思いの方が強かったと思うが、コンディションを整えゲームに出続け、９月の大事なところで非常に存在感を発揮してくれた。その戦いざまはリーダーとして一回り大きくなってくれた。隠れている部分では、岸田の成長も欠かせなかった。攻撃面においても勝負強さもあったし、勝負のリードをしていた。 　次は短期決戦だ。優勝はしたけれど、あくまでチャレンジャーとして臨んでほしい。いや、むしろ優勝したからこそ、余計にその気持ちを強めなければいけない。顎を下げて、脇を締めて挑む。受けて立つ、ではなく先手必勝。一発食らう前に先にかましてやろう―そんなアグレッシブさで暴れてほしい。（巨人軍オーナー付特別顧問） 　◆原辰徳氏の監督１年目　０２年、６月終了時点では２位ヤクルトと２差だったが７月以降に貯金を積み上げ独走。投手ではエース上原が１７勝、打者では主砲松井が５０本塁打を放って引っ張り、最終的には２位に１１ゲーム差をつけて就任１年目でリーグ優勝を果たした。日本シリーズは西武に４連勝で日本一に輝いた。