『ブルー きみは大丈夫』吹替えを務めた宮田俊哉と稲垣来泉にインタビュー。「『自分もきっと大丈夫!』と前を向ける作品」
子どものころ、あなたにもいたかもしれない空想の友達“イマジナリー・フレンド”。その友達が、自分が成長したいまもそばで見守っていてくれたら…。そんな優しくて心温まるファンタジー映画『ブルー きみは大丈夫』(6月14日公開)。「クワイエット・プレイス」シリーズを手掛けた監督・俳優のジョン・クラシンスキーが、コロナ禍で不安を感じている愛娘たちのために映画を作りたいと決意し、実際に空想で遊ぶ彼女たちの日常にヒントを得て、オリジナル脚本を書き上げた。 【写真を見る】「アフレコしながら、だんだん自分に見えてきました(笑)」『ブルー きみは大丈夫』宮田俊哉と稲垣来泉にインタビュー! 父(ジョン・クラシンスキー)の入院をきっかけに、12歳の少女ビー(ケイリー・フレミング)はかつて暮らしたことのある祖母のアパートに戻って来た。そこで、空想の友達“ブルー”(声:スティーヴ・カレル)と出会う。ブルーは子どもの成長とともに忘れ去られ、もうすぐ消えゆく運命にあった。大人なのに空想の友達が見えるアパートの隣人カル(ライアン・レイノルズ)と一緒に、ビーはブルーら空想の友達と新しいパートナーをマッチングさせようと奔走する。 日本語吹替版では、大きなもふもふのブルー役をKis-My-Ft2の宮田俊哉が、「早く大人になりたい」と願う孤独な少女ビーを稲垣来泉が担当した。今回MOVIE WALKER PRESSでは、アイドルとして活躍しながら芸能界屈指のアニメオタクとして知られる宮田と、4歳でドラマデビューし「nicola」専属モデルとしても活躍するネクストブレイク女優の稲垣にインタビューを実施!キャラクターとの意外な共通点やアフレコの苦労話、アニメにまつわる野望まで語ってもらった。 ■「親子の愛情あふれるシーンがすばらしくて、アフレコ中に大泣きしてしまいました」(稲垣) ――お2人はアニメ作品で声優を経験されていますが、実写映画の吹替は初挑戦ですね。オファーがきた時のお気持ちはいかがでしたか? 宮田「吹替のお仕事は挑戦したいと思っていたので、とてもうれしかったです。僕が演じた、子どもにしか見えない不思議な存在“ブルー”は、名前はブルーですが、見た目はパープル。僕のメンバーカラーも紫なので運命を感じました!」 稲垣「私も吹替のお仕事を一つの目標に掲げていたので、アフレコに行くのが楽しみでした」 ―― アフレコで感じた難しさや苦労したことはありますか? 宮田「原音の英語と別の声優さんが吹き替えている日本語の二カ国語を聞くのって難しいんです。しかも簡単な英単語はわかるので、英語のセリフに反応しそうになっちゃって、大変でした。僕、英検3級なんで(笑)」 稲垣「わかります!私は特に『イマジナリー・フレンド』の英単語に引っ張られてしまい、発音がそこだけ良くなっちゃって(笑)。アフレコは考えなければいけないことがたくさんあって難しかったのですが、とても楽しかったです。映像を見ながらタイミングを合わせてセリフを言うことが、普段のお芝居とは全然違って新鮮でした。でも、発声だけで相手との距離感や喜怒哀楽を伝えないといけないので、コツを掴むまで苦戦しました」 宮田「僕は、声のトーンはオリジナル版のスティーヴ・カレルさんのお芝居に寄せようか迷いましたが、声質も違うし、スタッフさんとも話し合って、地声より少し高めにしました。一番こだわったのは『きみは大丈夫』というセリフ。もう少し温かみを出したほうがいいんじゃないか、次はもっとスローな言い方にしてみようか、などなど試行錯誤して作った一言なので、感慨もひとしおでした。渾身の『きみは大丈夫』に注目してください!」 稲垣「私は、ビーとお父さんの終盤のやり取りで、アフレコ中に大泣きしてしまいました。愛情あふれるそのシーンがすばらしくて…。」 宮田「来泉ちゃんの鼻声に期待だね(笑)」 ――ビーの成長と冒険を見守りながら、空想や物語は改めて人を救う力があると思いました。子どもと一緒に鑑賞した親がボロ泣きするパターンではないでしょうか。 宮田「完成版を観て僕も泣きました。ネタバレになっちゃうからあんまり言えないんですけど、空想の友達たちのキュートさと感動が合わさっている作品で、どの世代の方も楽しめるお話だと思います。家族を想う人もいれば、自分の過去を振り返って思い出に浸る人もいるかもしれません。でも、『自分もきっと大丈夫!』というメッセージを受け取ってもらえると思います」 ――キャラクターそれぞれの印象や魅力を教えてください。 稲垣「ビーはお母さんを亡くし、お父さんも入院中で心に深い傷を負い、『私は、もう大人だよ』と少し強がっている女の子。でもブルーやカルと出会い、子どもらしさや笑顔を取り戻していきます。私は喜怒哀楽の『楽』の気持ちが強いタイプ。なので、ビーの明るい表情が見られてうれしくなりました。彼女の心の変化に注目してほしいです」 宮田「ブルーは一生懸命だけど、いつもちょっとズレちゃうところが可愛らしいです。僕も常に全力でやることを心掛けているので、シンパシーを感じました。例えば、ブルーが『イフ』って言いたいけれど、『イ、イ、イ…』なんて我慢しているシーンもわかるなって。僕もおもしろいと感じたら、周囲の空気を読まずに言いたくなる派なので(笑)」 ――外見的にもブルーは少し宮田さんに似ている気が…。 宮田「やっぱり、そう思われますか?僕も雰囲気が近いなって。来泉ちゃん、どう?似てる?」 稲垣「はい。優しく包み込んでくれるようなオーラが似ていると思います」 宮田「お~、ホッとした。アフレコしながらだんだん自分に見えてきて。僕が大きくなったらブルーみたいになるのかなって(笑)」 ――(笑)。紫というカラーも一緒ですし、やはり運命でしたね。 宮田「かれこれ15年ぐらいは紫を背負っていますから(笑)。でも、メンバーカラーを意識していると勘違いされるのが恥ずかしくて、紫のファッションを避けていた時期もありました…」 稲垣「えっ、そうなんですか?」 宮田「メンバーカラーだから?みたいにイジられるのが嫌で。最近は全然気にしてないけどね」 稲垣「紫は宮田さんご自身で選ばれたんですか?」 宮田「最初から決まっていて。紫って渋いでしょ?だから明るい色がいいなと思っていたけど、紫はステージで映えるし、年齢を重ねてから着ても恥ずかしくない(笑)。思い返せば『ポケモン』のエスパータイプが好きだったしな。いまとなっては紫でよかったです」 ■「『好きなことを好き』と発信してきたことが、いまにつながっています」(宮田) ――ブルー以外にも、テディベアのおじいちゃんや、たびたび弾ける石鹸バブルなど、個性豊かな空想の友達がたくさん出てきます。お2人は空想や妄想はお好きですか? 稲垣「小さいころ、『プリキュア』に夢中になっていて。その時はイマジナリー戦隊グループをつくり、マットを壁にたてかけて、ひとりで戦っていました」 ――『映画 プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日』で声優もされていましたね! 稲垣「はい。しかも初めての声優さんのお仕事が『プリキュア』だったので、うれしかったです」 宮田「僕は“イマジナリー・ドッグ”を2匹飼っています。コロナ禍の時に犬を飼いたいモードが加速しちゃって、心の中で柴犬2匹を飼うことに。アニメを観ながらエアで撫でたりしています(笑)」 稲垣「わかります!私もラブラドール・レトリバーやボーダー・コリーを想像して、エア散歩やエア添い寝とかしています」 宮田「なんだか僕ら思考が同じだね(笑)」 ――そう言えば、稲垣さんもアニメや漫画がお好きなんですよね。 稲垣「はい。今クールだと『転生したらスライムだった件』や『僕のヒーローアカデミア』の新シリーズ、『怪獣8号』、あとは『WIND BREAKER』と…。私、アニメのことを話すと止まらないんです!この間、過去に観たアニメを数えてみたら280作品以上ありました」 宮田「将来有望だな(笑)。僕は大好きなアニメを自分の手で作ることが夢で、そのためには原作が必要だと思っていて。だから、この3年間はライトノベル『境界のメロディ』の執筆に集中していました。それもあって、最近は1クール15作品ほどしか観れていなくて。いや~、もし僕のアニメがいつかできて、来泉ちゃんが『おもしろかった』って、どこかで言ってくれたら…なんて想像したら、ワクワクしてきたな」 ――そのアニメに稲垣さんが声優として参加するとか…。 稲垣「ぜひ!って思います!!」 宮田「ギャラ高そうじゃないですか(笑)」 稲垣「 (笑)」 宮田「もし『日本のアニメ』という教科書があったら、そこに宮田俊哉って一行でいいから書いてもらいたいです。“日本で一番売れたアニメ”って書かれたら最高ですが、“忘れ去られたこんなアニメ”でもいい。とにかく心に残るアニメ作りを目指したいです」 ――宮田さんは声優や作家など、得意なことや好きなことに紐づいたお仕事もたくさんされて、活躍の場をますます広げられています。本業のアイドルと、それ以外のお仕事、それぞれどのような意識で取り組まれていますか? 宮田「歌って踊るアイドルのお仕事も、アニメ関連のお仕事も、どちらも好きです。なにをやるにも変わらず全力で、エンジョイする。それだけです。最初はスタッフさんから、これは言っちゃダメ、あれはやっちゃダメ、イメージが崩れる、とか言われたこともありましたが、『好きなことを好き』って発信することは決してダメなことではないし、『イメージってなに?』って感じていました。だから、心の中で『言っちゃえ~』みたいなノリで突き進んできた結果、いまにつながっていると思います」 ――貫く姿勢がカッコいいです。 宮田「あとで怒られましたけど(笑)」 稲垣「尊敬します。折れない心は大事ですね」 ――映画にちなみ、ビーとブルーのような、人生を変えた“出会い”を教えてください。 稲垣「去年4月に事務所を移籍して、自分の中で色々な変化があり、新しい世界をもっともっと見てみたいという欲も出てきました。いまのマネージャーさんとの出会いは、必要不可欠だったのかなと思います」 宮田「僕は間違いなくキスマイのメンバーですが、今回の映画に絡めますと、ビーのお父さん役で出演されている浪川大輔さん。僕が(『劇場版BEM~BECOME HUMAN~』で)初めて声優のお仕事をした時、浪川さんのスクールでレッスンを受けさせていただき、そこで『続けたほうがいいよ』って背中を押してもらったんです。以降、“師匠”の浪川さんと同じ作品に出ることを目標にしてきたので、今回、目標が一つ達成されました」 ――今後声優業でチャレンジしてみたいキャラクターはありますか? 稲垣「すっかりビーの虜になり、ビーの子どものころの声を出すのが楽しかったので、幼い女の子の声をもう一度挑戦してみたいです」 宮田「僕は子どものころに夢中になっていた作品に参加したいです。『ポケモン』や、海外の作品だったら『ミュータント・タートルズ』が楽しそう。『俺、タートルズの一員なんだぜ』って、あのころの僕に自慢したい。もちろん、イメージカラーが紫のドナテロで(笑)」 取材・文=本山由樹子