「悪いイメージ広がるリスクが…」 夏祭りに参加する企業、増える”撤退” 呼びかけるだけでパワハラかも…社内行事にも「働き方改革」の波
長野県内の夏祭り支える企業や団体に広がる懸念
「長野びんずる」「松本ぼんぼん」など長野県内の夏祭りへの参加を見送る企業や団体が増えている。「地域への感謝」「社員の団結」などを目的に祭りの踊り連を支えてきたが、新型コロナ禍で祭りの中止が相次ぎ、練習や法被などの準備といったノウハウを引き継ぐ“伝統”が断絶。多様な働き方や価値観が重視される中、参加を「強制」と捉えられれば社員の反発を招き、パワハラとも受け止められかねない―との懸念が広がっていることも一因のようだ。 【写真】踊りのかけ声も解禁されてにぎわった松本市の夏祭りの様子
新型コロナもも不参加の契機に
松本市街地で開く松本ぼんぼんは今年で50回目(8月3日開催)。参加踊り連は2019年の220連・1万9千人余から、新型コロナ禍での20、21年の中止を挟んで22年に43連・2150人、23年は114連・5700人と減少した。企業連の不参加が目立つという。 「コロナがなくてもいずれやめていた」。松本市の自動車販売店の担当者は話す。宣伝や社員同士の交流を目的に会社が主導して社員有志を募り、松本ぼんぼんの踊り連に加わってきたが、コロナで祭りが中止されたのをきっかけに会社単位の参加をやめた。「私生活を大切にする価値観が広がり、強要のようになってしまうことは避けたい」と担当者。参加を「強制」と受け止められて離職者が増え、悪いイメージが広がるリスクを恐れたという。 職員有志が呼びかけ、医学部生も加わって松本ぼんぼんを盛り上げてきた信州大病院(松本市)。コロナ禍では感染対策上の理由で参加を見送り、その後も参加していない。中心人物が退職してノウハウが途切れ、「参加を促す核となる人がいない」という。
長野市街地で開く長野びんずるは今年で54回目(8月3日開催)。踊り連は近年、企業を中心に約200連・1万人前後で推移してきたが、20、21年の中止を経て22年は29連・800人、23年は87連・4千人と大幅に減った。 びんずるに毎年踊り連を出す長野市のある企業は、社員の参加は「有志」。社員の40代男性によると、管理職が若手に参加を促し、部署によってはくじ引きで参加者を決めることもあり、男性は「半強制」と感じてきたという。