「飲みニケーションは仕事に必要」「だったら会社辞めます!」上司と新入社員、どっちが正しい?
仕事熱心で覚えも早い新入社員。会社も期待していたが、ある日会社の飲み会で嫌な思いをしてしまう。悩んだ彼は、退職代行サービスを使って会社に退職を願い出た。上司は「酒を飲むのも仕事のうちだ」と言うけれど、飲み会は苦手という新人や若手に、いわゆる「飲みニケーション」を強制することはできるのか。そして、退職代行サービスを使って申し出てきた退職希望者を、会社は止めることはできないのだろうか?(社会保険労務士 木村政美) <甲社概要> 主に企業向けシステムの保守開発やメンテナンスを行う。従業員数。200名。 <登場人物> A:大学の情報学部を卒業後4月に入社した22歳。 B:システム開発課(メンバー数30名)に3人いる主任の内の1人で、Aの指導係。28歳。 C・D:Aの同僚。2人ともAと同じ課に所属しているが、それぞれ違う主任に指導を受けている。 E:総務部長で会社の人事労務の責任者。 F:甲社の顧問社労士。 ● 新入社員のAは優秀だし仕事熱心 「A君は仕事を覚えるのが早いね。この調子だったらすぐにでも担当を任せたいくらいだよ」 「そんなことないです。B主任の教え方がうまいからです」 4月下旬。AはB主任の指導の下、てきぱきと業務をこなしていた。B主任は大学卒業後に甲社に入り、昨年の4月に主任になってから中途採用者を含め5人の新入社員を指導したが、その中でもAは特に優秀だった。将来システム開発のエンジニアとして働ける会社に絞って就活し、希望通り甲社に採用されただけある。「早く即戦力として活躍したい」と日々熱心に仕事に励むAに、B主任や課長は期待を寄せ、指導にも熱が入った。
● 金曜日、新入社員の歓迎会をすることに GW明けの火曜日。課内朝礼の後、B主任はAに近寄った。 「遅くなっちゃったけど、今週の金曜日、課内で新入社員の歓迎会をするから予定空けておいてね」 「歓迎会って、どこでするんですか?」 「会社近くの居酒屋だよ。この頃忙しくて飲み会もなかったからガンガンやろうぜ。あれ?もしかして都合悪い?」 「いいえ……」 「じゃあ、よかった。主役がいないと宴会の意味がないもんね。そうそう、当日はE部長も参加するそうだから、よろしく!」 B主任が去った後、Aは大きなため息をついた。 「飲み会なんて苦手だな。どうしよう……」 歓迎会当日。A、C、Dは課長から勧められ、セッティングされた長テーブルの中央に並んで座った。宴会が始まるとE部長や課長、先輩たちが入れ替わり立ち替わり3人の近くに来ては、仕事の話や雑談をしたり「これからもがんばれよ!」など励ましの言葉を贈った。 CとDは皆と話を合わせて楽しそうにしていたが、Aはもともと酒が飲めない上に大学生の時はコロナ禍のせいで飲みに行く機会がなかったので、酒の席でどうふるまえばいいのか分からず、会話に相づちを打つだけでその場をやり過ごした。