<アグレッシブ・’21センバツ東海大甲府>第1部 軌跡/4 関東大会 東海大相模戦 諦めず好機つかむ /山梨
◇努力実った 主力の一打 東海大相模との秋季関東大会2回戦。付属校対決は序盤から両エースによる投手戦の様相を呈した。東海大甲府は、相模の左腕・石田隼都(はやと)投手(2年)のキレのある変化球と183センチの身長から投げ下ろす直球に苦しみ、八回まで散発3安打に抑えられていた。 1点をリードされて迎えた九回。攻守交代の際、村中秀人監督が「絶対に諦めるな。チャンスは来る」と選手を鼓舞した。直後に好機は巡ってきた。四球と4番・木下凌佑選手(同)の右前打で1死一、二塁とし、打席には久井竣也選手(同)。1球見送った後、外角低めに入ったチェンジアップを逆方向に打ち返した。打球は右翼手の前に落ちると、大きく弾んで頭上を越えていった。二塁走者に続き、一塁走者の木下選手も生還し、逆転サヨナラ勝ち。劇的な幕切れとなった。 久井選手はこの右翼への「流し打ち」について「練習の成果」と手応えを感じた。右打ちの久井選手は秋季県大会で左翼へ引っ張ることが多く、外角の際どい球にも対応できる逆方向への打撃を課題としていた。関東大会までの約3週間で木下選手らとともに球速の遅い球を狙った方向に打ち返す練習に取り組んだ。また、昨夏までの4番・渡部海夢(かいむ)さん(3年)にフォームをチェックしてもらい、構え方やスイングの軌道、腰のひねり方などのアドバイスを受けた。「渡部さんの指摘を意識したら、少しずつ逆方向に打てるようになった」と振り返る。 相模戦は石田投手の変化球などに苦しんだが、村中監督は終盤、チェンジアップがやや高めに浮いてきたのを見逃さなかった。九回裏、1死一塁で打席に立った木下選手はここまで安打はなかった。しかし、「3打席目で打ったスライダーはフェンスのギリギリまで飛んだ。次は打ち返す自信があった」。指示通り、狙いを定めたチェンジアップを右翼に運び、久井選手の逆転サヨナラ打につながる好機を演出した。 木下選手はヘッドスライディングで本塁に生還した後、拳を上げて喜ぶとともに涙を流した。脳裏には肘や肩のけがでほとんど練習に参加できなかった1年生の時の苦しい日々があった。本格復帰できたのは昨年6月。悔しさをぶつけるように練習に打ち込んだ。朝夕の練習は一番乗りし、チームの誰よりもバットを振ってきた自負がある。それだけに相模戦の勝利はうれしく、「苦しい時もあったけど、今まで諦めずにやってきて良かった」と話した。【金子昇太】=つづく ……………………………………………………………………………………………………… ▽2020年秋季関東大会2回戦 東海大相模 000001000=1 000000002=2 東海大甲府