オリックス系、運用対象に米商業不動産を検討-海外参入で残高1兆円
(ブルームバーグ): オリックス傘下の不動産運用会社は、運用先として米商業用不動産の組み入れを検討する。信用力が低下した「ディストレスト物件」に対する知見を生かし、海外不動産の運用事業への参入を図る。日本の不動産運用会社による海外市場への進出例はまだ少ないという。
オリックス不動産投資顧問の北村達也社長がブルームバーグの取材で明らかにした。顧客ニーズのある物件を組み込んだ私募ファンドを組成し、運営を受託している。不動産物件の運用には土地勘が必要なこともあり、これまでの運用対象は国内のみ。現在の預かり資産残高(AUM)約9000億円を、海外市場への参入もテコに1年後には1兆円に増やしたい考えだ。
米商業用不動産市場は、金利上昇に加え、新型コロナウイルス禍が一段落した後も従業員のオフィス回帰が進まず、空室率の高止まりに見舞われている。資産価値の下落により米地方銀行やあおぞら銀行などが引当金の積み増しを迫られた。金融機関による商業用不動産へのエクスポージャーを巡る懸念が高まる中での参入検討となる。
北村社長は「リスクはあるが機会もある」と説明。物件所有者が銀行ローンの借換時に資金手当てができなかった場合、安値で市場に売り出される可能性があるためだ。データ会社トレップによれば、2025年末までに1兆ドル(約150兆円)以上の商業用不動産ローンが満期を迎える。
不動産会社など国内投資家の一部が「米商業用不動産に興味を示している」といい、「まずはいい物件を安く顧客に提供できるかだ。用途変更も含めて物件ごとのバリューアップを提案していけるチャンス」と述べた。
オリックスは19年に米商業用不動産ローン組成会社を買収するなど、ローン債権やディストレスト証券投資などに知見があり、米国拠点の営業網などを活用できるとみている。
米国では22年半ばからオフィス向け商業用不動産担保証券(CMBS)ローンの30日延滞率が主要都市で顕著に上昇している。一方、ここにきて悲観一辺倒ではなくなりつつもある。米投資会社ブラックストーンのジョン・グレイ社長は今月14日、不動産価格が底打ちしたと述べ、値崩れした資産を素早く買い上げるべき好機が訪れているとの認識を示した。