【田村藤夫】巨人プロ2年目・浅野翔吾のバッティングで気が付いた課題
【185】<ファームリポート:日本ハム8-2巨人>◇25日◇鎌ケ谷 巨人のプロ2年目・浅野翔吾外野手(19=高松商)のバッティングに注目した。 ◇ ◇ ◇ まだ高松商での甲子園大会から見て来た素材だけに、ファームで見せるバッティングは突き詰めて観察させてもらった。捕手目線で分析した時、率直に感じたポイントを解説したい。 第1打席は1死走者なし。前打者が3球で左飛に終わった後での打席だった。浅野は先発した左腕細野の初球148キロ、真ん中やや低めの真っすぐに反応した。結果は差し込まれた一邪飛。 第2打席は2死一塁で、同じく細野との対戦。初球140キロ、ちょっと外寄りでベルトの高さのシュートもしくはツーシームを打って左前ヒット。 細野と対戦したこの2打席を見て感じたことだが、まず第1打席、初球は真っすぐ狙いだったと思う。そこに148キロの低めの真っすぐ。浅野は果敢にバットを出したが、明らかに球威に押されていた。 見ていた私の印象からすると、タイミングは合っていない。真っすぐ狙いで、真っすぐを打ち、一邪飛では物足りない。狙って打ったように見えたが、その割にはなあ…、という感想を拭えない。 打ちに行くのなら、もう少し惜しい当たりを見たかった。せめてファウルにするなり、引っ張るなり、浅野という強打者の片りんを感じたかった、というのが正直なところだ。 私の中では、浅野という打者は金属バットとはいえ、あの広い甲子園で左中間最深部に運んだ強烈なインパクトがある。スケールが大きなバッターとして、期待値は高い。決してホームランバッターと決め付けているわけではない。どちらかと言えば、プロでは中距離バッターという印象か。 ならば、仕留める確率を上げてほしい。160キロ近い真っすぐを、狙い撃って一邪飛は分かる。左腕細野のキレのある真っすぐとはいえ、148キロにあの打球では、もっと強いスイングで、タイミングを合わせてほしかった。 むろん、打席に入る前に準備をしているはずだ。細野の球筋を見て、自分のスイングを加味して、真っすぐを狙った初球だったはず。そもそも打者は真っすぐを狙うもので、低めとはいえ、ゾーンの真っすぐへの対応としては課題が残った。 その流れで第2打席も注目していた。私が見た感じでは、第1打席と同じように真っすぐに狙いをつけて初球の変化球に反応して、左前ヒット。球速が遅い分だけ対応できたように感じた。 捕手の視点からすれば、第1打席の真っすぐ対応を参考にすれば、第2打席も内角に真っすぐから入りたくなるスイング。細野-伏見の意図は取材しないとわからないが、ここは真っすぐ狙いの変化球対応で、ヒットにした浅野の積極性と対応力は一定の評価はできる。 仮に、第2打席も真っすぐから入ったとしたら、あのスイングならばセンター前に抜けていたか、もしくは第1打席と同じように差し込まれたか。ちょっと判断に迷う。 自信を持ってセンター前、と言いたいところだが、次回見る時は、そう確信できるスイングを見たい。ただ、第1打席の反省を修正して打席に入っているはず。ヒットにした分だけ、学習能力としては見るべきだろう。 私は浅野に対してもっと高いものを求めたい。第2打席で学習能力を発揮したのならば、そもそも第1打席から、きっちり初球真っすぐに対応できる意識付けができたのではないか。細野のキレと自分のスイングを頭の中で整理していれば、少なくとも差し込まれることはないだろう。それができる打者だと理解している。 第3打席は右投手との対戦だった。カウント1-1から真ん中へのカーブにのけぞるようにして見逃しを取られた。続くフォークはうまくカットしたものの、5球目にまた低めのカーブに空振り三振。 内角よりのカーブにのけぞるのは分かるが、真ん中のカーブをのけぞるような反応が気になった。投球に対する判断が速いのかな、と感じる。早過ぎると、この時と同じように相手バッテリーに好材料を与えてしまい、あっけない打席になってしまう。こうしたところも打者浅野としては、確実につぶしていきたい課題だろう。 最後に、守備では中飛を4回確実に処理していた。1歩目の判断が非常に良かった。打球音と同時に、ポンッと1歩目を理想的なコースに運んでいた。これは外野手としては生命線だろう。足もあり、判断が良いだけに、守備では何の不安もなく1軍でやっていけるだろう。 私は捕手出身だけに、どうしても打者の反応、それも真っすぐ狙いで真っすぐ対応にフォーカスして見てしまう。仕留めた時は、内容も伴った結果なのだから解説することもないのだが、ミスショットした時にはその原因はどこにあるのか、考えるクセがついている。 そこを元に、次の打席の攻略法を考えるからだろう。そういう視点からすると、浅野の打席には、相手捕手にヒントを与えるスイング、反応が散見された。 ただ、これは決して悪いことではない。2年目で、相手チームも浅野の特長を把握して攻めてくる。その中で課題が浮き彫りになる。それを早い段階で深く自覚し、きっちり対策していけば、実戦で鍛えられた実力として備わる。 凡打した理由を突き詰めて考えること。その対策をいろいろ試しながら、自分にあった技術を会得すること。この日の3打席には、これから浅野が成長するために必要な材料がたくさんあった。(日刊スポーツ評論家)