「23インチのピレリPゼロでこの乗り味は凄い」 モータージャーナリストの藤野太一がBMWアルピナXB7など5台の輸入車に試乗!
外車は運転が楽しい!
モータージャーナリストの藤野太一さんがエンジン大試乗会で試乗した5台のガイ車がこれ! ベントレー・コンチネンタルGT S、BMWアルピナXB7、ジープ・ラングラー・アンリミテッド・ルビコン4xe、ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ、ミニ・ジョン・クーパー・ワークスに乗った本音とは? 【写真26枚】モータージャーナリストの藤野太一さんがエンジン大試乗会で乗った5台の輸入車の写真を見る ◆魅力はいくつもあるけれど 先日、知人女性からクルマ探しの相談をうけた。これまで国産SUVを乗り継いできたけれど、そろそろガイシャに、できればポルシェのスポーツカーに乗ってみたいという。スポーツカーはまったくの初体験というので、木更津のポルシェ・エクスペリエンス・センターでちゃんとアクセルとブレーキを踏む体験をすることを勧めてみた。718と911を乗り比べ、その性能の凄さに驚き、さすがにもてあまし、やはりSUVの実用性は捨てがたいと感じたという。日をあらためてマカンに試乗すると「運転する感覚が、ポルシェのスポーツカーとまるで同じ。うちの車とはまったく違う」と口にし、彼女は喜んでマカンを購入した。ブランドとかデザインとか性能とか希少性とかヘリテージとか、ガイシャの魅力はいくつもあるけれど、私自身のクルマ選びもそうであるように、結局のところ“運転が楽しい”ということに尽きるのだと思う。 ◆ベントレー・コンチネンタルGT S「即座に浸れる」 今回用意された36台の試乗車のうち、どれか1台に乗ってかえっていいと言われたら、コンチネンタルGTを選ぶ。本当は2024年4月で生産が終了するW12エンジン搭載モデルがいいとか、屋根開きのGTCがいいとか、Sのようなスポーティなものより、スピードやマリナーのようなラグジュアリィな仕様がいいとか、好みをいいだすとキリがないけれど、いずれも素晴らしいモデルであることに変わりはない。運転席に座るとメタルパーツをふんだんに用いた各種スイッチやエアベント、それこそウインカーやワイパーレバーの先にまでローレット加工が施されており、即座にベントレーの世界に浸れる。エアサスペンションや48Vアンチロールシステムなどの恩恵もあって、ステアリングを握っていると、大きさや重さをまったく感じさせない。乗り心地はフラットでウルトラスムースだ。ドライブモードには、足を引き締め、エグゾーストを高めるスポーツモードも用意されていたが、すぐにコンフォートに戻した。体育会系はあまり似つかわしくない。この時代にあえてクーペ、とても洒落た選択だと思う。 ◆BMWアルピナXB7「まさにアルピナ・マジック」 2025年にBMWグループへの商標権の譲渡を控え、新規開発は終わりを迎えつつあるアルピナ。XB7は、マイチェン後の上下2段に分割された特徴的なヘッドライトを受け継ぐモデルだ。変わったのは顔つきだけではない。4.4リッター V8エンジンが、N63型から最新世代のS68型へ変更されており、最大トルクの発生回転域が広くなり、また48Vマイルドハイブリッド・システムも追加されている。動き出しからウルトラ・スムース。補機類などのノイズもなく静粛性の高さもあって、低回転域ではまるで電気自動車で走っているように感じる場面もあった。アクセレレーターに力を込めると、アルピナ・チューンのV8エンジンらしく精緻さと気持ちよさを味わわせてくれる。そしてアルピナ独自のサスペンションの仕立てによる、コンフォート・プラス・モードのまったり感は格別。23インチのピレリPゼロで、この乗り味をつくりだす手腕はまさにアルピナ・マジックといえるものだ。キャブレーターとクランクシャフトを紋章に掲げ、電気自動車は手掛けない矜持をもつアルピナ社のラスト・オーダーはもう間もなくだ。 ◆ジープ・ラングラー・アンリミテッド・ルビコン4xe「大いにあり 」 乗り込むと、久しぶりの左ハンドルのジープにうれしくなった。聞けば、PHEVはいまのところ左のみの設定なのだという。最高出力272ps、最大トルク400Nmを発揮する2リッター直4ターボに2つのモーターを組み合わせる。バッテリー容量は15.46kWhで、EV走行距離は42km(WLTCモード)というが、試乗スタート時にはバッテリー残量がすくなく、まずはエンジンを主体にハイブリッドモードで走行する。重量増によるもたつきはなく、想像していた以上に力強く走る。今回はテストできなかったが、オフロードでのモーターによるアシストの恩恵も大きいはずだ。途中からEセーブに切り替え、モーターで発電しバッテリーへの充電を試みた。しばらく走行し、メーター内に充電量8%、走行可能距離5kmと表示されたところで電動走行モードに切り替えた。当たり前だけれど、音もなくスムースに加速する。これまでジープでは味わったことのないその違和感が新鮮だ。街で見かけることが多いラングラーだけれど、日常は都市部でしか使わないのだとしたら、この電動化モデルは大いにありだと思う。 ◆ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ「最も楽しいウラカン」 試乗車に向かうと、すでに同乗予定のEPC会員のIさんがしげしげとボディを眺めている。ウラカンに乗るのは初めてという。助手席に乗り込むと「着座位置が低い、いつもとぜんぜん違う」と興奮が伝わってくる。ドライビング・モードはベースのストラーダで走りだす。「意外に音は静かだし乗り心地もいいですね」というように7段DCTの変速マナーも極めてスムーズで、デビューから約10年が経過するだけあって熟成の感ありだ。ターンパイクに入り、モードをスポルトへ。まるで別物のようにV10エンジンのエグゾースト・ノートが一気に高まり、アシがギュッと引き締まる。「ロールすることなく、路面にはりつくように走る。これぞ本物のスーパーカーですよね」とIさんもとても楽しそうだ。テクニカは最終型にしてもっとも楽しいウラカンに違いない。帰り際「実はわたしエンジニアでして……」。なんとある国産メーカーのあのスポーツカーやらEVの開発に従事してきたと話す。こんなにクルマ好きな開発者がいるのだから、ガイシャに負けじともっと元気になるクルマの登場に期待したい。 ◆ミニ・ジョン・クーパー・ワークス「ラスト・チャンス」 現行3世代目のBMWミニが発表されたのは2013年のこと。いま第4世代へのモデルチェンジ期にさしかかっているが、第3世代の一番ホットなモデルがJCWだ。派生モデルの多さやそのサイズゆえ、ミニはミニじゃないなんて揶揄されることもあるけれど、原点ともいえる3ドア・モデルのシンプルなスタイリングはやはり魅力的。全長3880mm×全幅1725mmというサイズはしっかりミニしている。最高出力170kWの2リッター4気筒ターボ・エンジンは、ワイルドに吹け上がりちゃんといい音がする。足はそれなりに硬いけれど、剛性の高い3ドアのボディがそれをしっかり受け止める。リムの太いステアリングに、クッと力を加えるとロール少なくノーズがすっすっと向きをかえるゴーカート・フィーリングは健在。飛ばさなくても、街中で交差点を曲がるだけでも楽しい。ミニは2030年までにEVブランドへスイッチすることを目指しており、新型のJCWもEV仕様が登場するようだ。ジョン・クーパーさんの世代から受け継がれてきたアナログな“駆けぬける歓び”を味わうラスト・チャンスだ。 文=藤野 太一 (ENGINE2024年4月号)
ENGINE編集部